「パシッ」と駒音が響き、時折「王手」「参りました」の声が漏れる。中学生プロ棋士の藤井聡太四段が公式戦29連勝の新記録を樹立し社会現象となる中、沖縄県内でも小学生を中心に将棋ブームが沸騰中だ。1日、宜野湾市の豊田塾宜野湾将棋道場(照屋彰代表)には子どもたち約20人が集まり、将棋を指していた。藤井四段への憧れを口にし、「プロになりたい」と瞳を輝かせる。(社会部・川野百合子)
◆将来は藤井四段みたいに
同道場でアマ五段の渡口良渚(よしなぎ)さん(宜野湾中2年)に挑んでいたアマ四段の小林恕掌(じょしょう)君(長田小6年)は、腕を組んだり眉をひそめたりしながら次の一手を考えていた。7歳で始め、「今年か来年には(プロ登竜門の)奨励会に合格したい」と語る。
はごろも小3年の知花優真君は、テレビで藤井四段の活躍を見て4月から将棋を始めた。「級が上がるのがうれしい。家でもお父さんと対局している。将来、藤井四段みたいなプロになりたい」と意気込む。
指導する照屋さんは「道場への問い合わせはここ1カ月で20件近くあり、こんなことは初めて。藤井四段が10連勝した頃から多くなってきた。指導員が足りず、3人で30~40人の子どもを見ないといけない状態」とうれしい悲鳴を上げた。
◆人気本、生産追いつかず
県内の書店にも将棋ブームは及んでいる。ジュンク堂書店那覇店では、藤井四段が子どもの頃に遊んでいたという商品「NEWスタディ将棋(くもん出版)」への問い合わせがやまない。森本浩平店長は「今までは月に1~2個売れる程度だったのに、最近は20件近く問い合わせが来ている。全国的に売れていて生産が追いついていないらしい」と明かす。
リブロリウボウブックセンター店では将棋の漫画「3月のライオン」が売れているという。両店ともこの人気を逃すまいと、将棋関連コーナーやフェアを企画中だ。
◆子どもの将棋人口増加
日本将棋連盟県支部連合会の新垣学事務局長は「子どもの競技人口は確実に増えている。1月の大会では、子どもを中心に過去最多の190人が参加した」と説明する。
また、将棋セットの貸し出しを希望する学童クラブも増えているといい、「初心者クラスには2、3年前は3人ぐらいしかいなかったのに、最近は50人近くに増えた」とブームを歓迎した。