
【宮古島】旧上野村議会で「オトーリ廃止に関する決議」を採択し、追放宣言してから14日で40年が経過した。沖縄タイムス宮古支局は8日、オトーリ賛成派からシンガー・ソングライターの下地暁さん(65)、反対派から本紙「時事漫評」作者の砂川友弘さん(70)、泡盛の専門家でフリーライターの下地恵子さん(67)の宮古島出身3人による座談会を開催し、オトーリへの思いを語り合ってもらった。(司会=宮古支局・當山学)
―オトーリについてどう考えてるのかを、それぞれの立場から、まずは賛成派の暁さんお願いします。
下地暁 「僕自身はあまり飲まないけど、昔は酒があるともう必ず回さなくちゃいけない時代だった。けど決してそうじゃなくて、オトーリっていうのはクイチャー(踊り)のように気持ちを一つにつなげましょうって意味があるわけでしょ。無理強いがなければ、一つの儀式の中でお酒をみんなで平等に分かち合うっていうのは素晴らしい宮古島の文化かな」
―友弘さん、昔はオトーリをやっていましたよね?
砂川友弘 「やってるからこんなんですよ。20歳30歳からやっていると、私なんかドクターストップがかかりました。半年やめて復活したら、解禁記念で回して」
下地暁・下地恵子 「で、またやめて」
砂川 「身をもって体験しているから若い人にはやってほしくない。最近はコロナ禍のおかげで3年間やってない。懐かしい思い出」
下地恵子 「年を取ると飲む量が減るからね。病気の人も増えるし。宮古のある酒造所の社長なんか、自分が病気になってから『オトーリを回し飲むのは神様への冒涜』とか言いだして。奥さんが『は? あんなにオトーリやっとった人が言うの?』みたいな」
―専門家の見解は?
下地恵 「昔は祭祀の時に神様に奉納した後、みんなで同じように下げた酒を飲むという一つの平等精神があったわけさ。そんなにいっぱいあるものじゃないから、それで終わっていた。ところが酒をたくさん造れるように技術が発展すると『まだあるから飲める』みたいになっていった」
「みんなが同じように同じ場所で分け合って飲むという意味では、すごくいいことと思うけど、これがいつの間にか一つの飲み方しかできないとなると、それは問題」
「ただ、本当に文化かな?と思うんだよね。昔は神様にお供えした後に飲むぐらい。みんなが今みたいにオトーリするようになったのは復帰前ぐらいじゃないかな。酒がいっぱい造れるようになって」
砂川 「みんなウイスキーで回していた。ウイスキーが入ってくるようになって水割り文化になった」
下地恵 「泡盛でのオトーリは割合新しい。だから文化なのか微妙」
―文化というか精神みたいなものですか?
下地暁 「僕の捉え方はそっちの方。宮古では平等の精神が根強い」
砂川 「平等より自由だ! 旧上野村の廃止宣言なんて、行政が個人の飲み方を条例で規制してるんだよね」
下地暁・下地恵 「確かにそうだね」
―上野の廃止宣言は他の地域に広がらなかった。
下地恵 「やる気がないからね」
砂川 「上野の飲み方はすごいよ」
下地暁 「そうなの? 俺、上野婿だけど、幸いなことに向こうのお父さんが飲まなかったからね」...