約700ある農協を束ねる全国農業協同組合中央会(JA全中)の「改革」案がまとまった。約60年ぶりというが、何がどう良くなるのかなかなかイメージできない

 ▼全中は農協法上の根拠を失い、2019年3月までに一般社団法人となる。全中が地域農協に行っている監査や経営指導の権限がなくなる

 ▼政府は、全中の権限をなくせば、個々の農協は自由な事業展開ができ、農家のためになると繰り返し、全中を押し切った

 ▼県内の農協幹部はこの改革に「理解し難い」と苦言を呈したが、なぜそこが主要な論点なのか、何か政治的なウラがあるのではと、農家でなくともふに落ちなかった県民もいただろう

 ▼環太平洋連携協定(TPP)に抵抗する全中に打撃を与える。不評の成長戦略の目玉として政権が強調したい。狙いの見方は定まらないが、それもこれも、農業活性化や農家所得を増やすための道筋が示されないまま、制度論議に終始したからである

 ▼「改革」が政権がいう効果をもたらすかは現時点で見通せない。一方、県内の農業産出額は1980年代半ばをピークに減少傾向が続いている。高齢化に担い手不足、定品質・定量・定時生産と、直面する課題は多い。地域を知る農協には、長期を見据えた創意工夫のたゆまぬ実践と、結果としての農業再生が期待されている。(宮城栄作)