1935沖縄 よみがえる古里

【糸満売り(上)】漁師の家に住み込みで働く子どもたち 体得した潜水技術で67m潜る

2017年7月6日 21:00

 「アマ、ミユンロー(海が見えるぞ)」「ヤ、テダ、ミユンローヤ(お日さまも見える)」

小さなサバニに乗る子どもたち。中には沖縄本島各地や離島出身の「糸満売り」された子も多かった、との見方がある(写真は朝日新聞提供)

糸満売りで培った潜水技術が糸満一とされた島袋本一郎さんが、故郷・国頭村から糸満に移築した赤瓦の家。長男の勝男さん(72)(左)と昭子さん(67)夫妻が大切にしながら今も住んでいる=6月28日、糸満市糸満

島袋本一郎さん

小さなサバニに乗る子どもたち。中には沖縄本島各地や離島出身の「糸満売り」された子も多かった、との見方がある(写真は朝日新聞提供) 糸満売りで培った潜水技術が糸満一とされた島袋本一郎さんが、故郷・国頭村から糸満に移築した赤瓦の家。長男の勝男さん(72)(左)と昭子さん(67)夫妻が大切にしながら今も住んでいる=6月28日、糸満市糸満 島袋本一郎さん

 糸満を訪れた旅人のカメラをのぞいて、不思議そうにはしゃぐ子たち。サバニの手入れをしていた子どもたちの、そんな言葉が雑誌「旅と伝説」1930年元日号に記録されている。35年に大阪朝日新聞の記者が糸満を訪れ、サバニを操る子らを取材した時にも、似たような会話があったのだろうか。

 「旅と伝説」の記事は、この子たちを「雇い子」、いわゆる「糸満売り」されたのだろうと書いている。糸満売りとは、親は漁師から前貸しの形で金を受け取り、代わりに10歳前後の子が徴兵検査のある満20歳まで漁師の家に住み込みで働く仕組み。

 ふるさとの家に帰れず、借金と利子を返すために働くのだが、日々の漁労を通じて高い技術が身に付いた。潜れば糸満一だったという故・島袋本一郎さん(1916~2017)=糸満市糸満=は13歳の時、7年間100円で糸満売りされた。住み込みを終えて出稼ぎしたシンガポールで1938年、水深約67メートルを潜った。

 その後、沖縄に戻り沖縄戦で防衛隊として招集されたが生き延びた。58年には故郷の国頭村辺野喜から赤瓦の実家を糸満に移築した。長男の勝男さん(72)は「故郷にも糸満にも、愛着が深かった」と父をしのぶ。

 糸満売りは一種の人身売買で、現代では人権侵害。ただ、80年代から糸満で古老の聞き取りをする法政大沖縄文化研究所国内研究員の加藤久子さんは「酷な面は確かにあったが、一方で親方に大切にされ、漁で身を立てた人もいる。現代的な見方にだけ立つと、当時の現実を見失う」と解説する。 (「1935沖縄」取材班・堀川幸太郎)

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