[マスクの下 こころとからだ 子どもたちの今](5) 増える肥満(下)
肥満傾向のある小学4年男児は17・1%-。
「かつてない事態だ」。那覇市医師会生活習慣病検診センターの崎原永辰所長は、2022年度に市内の小学生が受けた健康診断の結果に危機感を示す。
沖縄は、成人のメタボリック症候群の割合が全国で最も高い。それを反映するように、市内小4男女の肥満傾向の割合も、10年度以降は全国平均をおよそ1ポイント上回り続けてきた。
今回はさらに悪化し、21年度の全国平均12・03%(小4男児)を5ポイントも上回る。年度が違うため単純比較はできないが、関係者にとって「衝撃的な数字」だった。
「放課後は家で動画やゲーム」「外遊びの機会が減って近視になった」「毎日体重を量っては落ち込み、自己肯定感が下がっている」
市の小児生活習慣病検診で肥満傾向児の保護者が書いた問診票には、コロナ禍での子どもたちの心身の変化を心配する記述が目立つ。
コロナ流行前の19年度、保護者に子どもの生活習慣で心配なことを尋ねる問診項目で、最も多かったのは「食べ過ぎ(大食い・早食い)、好き嫌い」で、全体の36・3%を占めていた。それが、流行下の22年度は「運動不足」が43・0%で首位となり、「食べ過ぎ」(28・9%)を大きく上回った。
長引くコロナ禍による生活習慣の変化が、市内の子どもたちの肥満傾向に一層の拍車をかけているように見える。
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糖尿病や脂肪肝、高血圧や高脂血症などは、子ども時代からの肥満が契機になることが多い。こうした生活習慣病は、成長するにつれて少しずつリスクが高まり、自覚症状なく悪化する恐れがある。一方で、9歳前後の肥満は、成長期に解消しやすい特徴がある。
崎原所長は「運動控えなど一度変わった生活習慣を、再び変えることはなかなか難しい」としつつ、肥満改善に取り組みやすい工夫を挙げる。朝食をしっかり取り、夕食はなるべく就寝の2時間前までに済ませる。夕食後のおやつは避け、日々の食卓にはできるだけ和食を。通学や外出先で歩く時間を少しでも確保する-などだ。
「成長曲線を大きく外れる場合は、かかりつけの小児科や学校医に相談し、適切な指示を受けることも一つの手。家庭だけに任せず、社会として早急に対策を講じるべきだ」と話す。(「子どもたちの今」取材班・篠原知恵)
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