知人からうれしいメールが届いた。県外に住むその人の知り合いが「特別養子縁組」で母親になったという、幸せな報告だ。子供との新たな人生を、わが事のように喜んでいた

▼メールには「どうやら日本で初めてのようです」と、新聞記事も添付されていた。母親は性同一性障がいで、男性から女性になった経緯を持つ。性別変更した人が、法的に母親と認められるのは初という

▼長い間、彼女が心と体の違和感に悩み、苦しんでいたのをよく知る知人。「あの子を支えて、間違いなかった」の言葉に心からの祝福がにじみ、胸が熱くなった

▼戸籍の性別変更が可能になったのは2004年7月。女性として人生を再スタートし、結婚して子供を持つまで、多くの壁にぶつかったろう。一つ一つ、粘り強く乗り越えたのも夫や家族、多くの人の愛と信頼、理解があってこそ

▼渋谷区は先日、同性カップルに結婚証明書を発行する条例案の議会提出を決めた。欧米に比べ人権意識が低いとされ、自らと異なるものを差別・排除する風潮がまだ根強い日本では、画期的と言わざるを得ない

▼偏見や固定観念を捨て、さまざまな生き方に触れれば「こんなにも多様な人生があるのかと、勇気づけられるだろう」と県内の当事者はいう。苦難を越えて手にした幸せが、大きく実ることを願う。(儀間多美子)