「最低でも県外」を掲げた旧民主党政権が「辺野古回帰」したのは“不動産探し”に終始したからだと言われる

▼普天間飛行場の代替候補地が浮かんでは、地元の反発を浴びて引っ込める。迷走ぶりを揶揄(やゆ)した言葉だ。当時、東京で取材していて感じたのは、国家間の外交問題で、一方だけが得をする主張は受け入れられないという不文律だった

▼辺野古断念は沖縄にとってプラスでも、日米両政府はそう捉えない。外交上の要件を満たす解にはなり得なかった

▼時を経て、民間のシンクタンク「新外交イニシアティブ」(ND)が辺野古に代わる選択肢を発表し、米ワシントンでロビー活動を行っている。提言の肝は、海兵隊の運用を変えることが米国の戦略上の利益にかない、辺野古埋め立ても不要となる、というものだ

▼従来の対米要請でも沖縄の民意を踏まえた訴えは行われてきたが、議論は平行線をたどることが多かった。「代替地探しから運用見直しへ。ワシントンを拡声器に東京へ伝えたい」。NDの猿田佐世事務局長は提言の浸透に期待を寄せる

▼米軍の運用を妨げるものであれば、日本政府が検討に値しないと考えるのも分かる。ただ、より機能性が増し、日米がウィンウィン(相互利益)になるなら話は別だ。支持率が下落している安倍政権の反転攻勢の一手にどうだろう。(西江昭吾)