[レッドヒル 米軍のハワイ汚染]
【ジョン・ミッチェル特約通信員】米ハワイ州オアフ島のレッドヒル地下貯油施設で2021年11月20日、7万2千リットルの燃料が漏れ出し、9万3千人の飲料水を汚染した。1年半近くがたつ今も健康被害に苦しむ米軍人の妻は本紙取材に「米軍は私たちの相手をしなくて済むように、早く死んでほしいと願っているようだ」と訴える。

同月28日、アマンダ・ザーバージンスキーさんが用事を済ませて米軍住宅に戻ってくると、「家がガソリンスタンドのような臭いだった」という。
■口の中がやけど状態に
米軍の住宅管理窓口に電話すると、この日同様の訴えは3人目だと聞かされた。交流サイト(SNS)では、多くの近隣住民が異臭を訴えていた。
アマンダさんの頭や喉は激痛に襲われた。軍の救急外来を受診し、口の中が薬品でやけど状態になっていると診断された。
レッドヒルを所管するパールハーバー・ヒッカム基地の司令官は当初、飲料水を飲んでも安全だというメールを住民に出した。その後、海軍は燃料漏れが米軍住宅の飲料水を汚染していたことを認めた。住民をホテルに移動させたが、一部は虫が発生しているような施設だった。
■軍医は嘲笑「辛い物を食べたのでは」
軍医たちはアマンダさんが望むような治療をしてくれなかった。「階級の高い軍医が、辛い物を食べたのではないか、と聞いてきた。私を嘲笑したのです」と憤る。
この他の婦人科の症状も、緊急手術が必要になるまで無視された。やっとの思いでかかった民間の医師が、ジェット燃料による脳の中枢神経の損傷だと断定してくれた。
■米軍に説明責任を求め告発
子ども3人も、頭痛、記憶障害、鼻血などの健康被害に悩まされている。長女のバネッサさんは、時折鼻血に染まった枕の上で目覚めることがある。
アマンダさんの症状がひどいと、バネッサさんは母が死んでしまうのではないかと悲しみに暮れる。それを見て、アマンダさんはもう黙ってはいられないと決意した。家族の健康がいかに毒されたかを告発し、説明責任を果たすよう軍に求め始めた。
■楽園と思ったハワイ「来て後悔」
「軍は国民や軍人のためにあるのではない。まず軍自身を守る」。米軍コミュニティーの中で、そう発言してはばからない。
長女のバネッサさんも最近、人生観が変わってしまったという。「もう軍は信じられない。最初、ここに来た時は楽園だと思った。今は来てしまったことを後悔している。早く出て行きたい」