[東京報道プラス][アクロス沖縄](185)宇宙研究で東京大学総長賞受賞 仲里佑利奈さん(24)=那覇市出身
東京大学大学院博士課程で、宇宙について研究している。宇宙望遠鏡で得られたデータを基に、130億年前の銀河をシミュレーションで再現。若い銀河が急速に進化する過程を理論的に説明し、総長賞を受賞した。「人類の価値観が変わるほどの壮大な学問に携われるのが、めちゃめちゃ楽しい」と目を輝かせ、宇宙の話は止まらない。「もっと謎を明らかにしていきたい」と意気込む。
宇宙物理学は、古典力学、統計力学、量子力学、電磁気学と幅広い学問を駆使して、地球さえ生まれていなかった途方もない過去を解き明かす。膨大なデータを扱う高度な計算が必要で、スーパーコンピューターも使いこなす。プログラミングは必須条件という。
「大学生の時にもっと勉強すべきだった」と笑うが、見せてもらった修士論文は、英語と難解な数式がずらりと並ぶ。「こつこつと努力するタイプ」と自身の評価通り、相当な努力を積み重ねてきたのが分かる。
米航空宇宙局(NASA)が打ち上げたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の撮影により、138億年前の宇宙誕生から早い段階で、いくつもの銀河が存在していることが分かった。得られたデータから、若い銀河の形成過程をシミュレーションで再現し、理論的に解き明かした。
大学院修士課程で手がけたこの研究が、昨年度の東大総長賞に輝いた。修士生3千人から、選ばれたのは2人のみ。「東大に合格しただけでもうれしいのに、総長賞までもらえるなんて思いもよらなかった。頑張ってきて良かった」と振り返る。
宇宙研究を志したのは、中3の冬。図書館で目当ての本が見つからず、たまたま手に取ったのが宇宙論入門の本だった。「未知のことが、こんなに広がっているんだとスケールの大きさにひかれた」。
著者略歴を見ると、東大卒とあった。「同じ道に進めば、私もきっとなれる」と夢を描く。当時、通っていた昭和薬科中高では毎年3人が現役で東大に合格していた。「まずは3位以内」を目指し、地道に勉強をしていった。
東大に入学して驚いたのが優秀な人材の多さ。「どんなに頑張ってもかなわない人たちと切磋琢磨(せっさたくま)することで、成長できる」と前向きに捉えた。本年度からは博士課程1年に進学。ノーベル賞受賞者などの著名な研究者といった「雲の上のような人たちにも会える。吸収できるところは、どんどん吸収していきたい」と学べる環境を最大限に生かそうと意欲的だ。
宇宙物理学について「研究で明らかになった成果に対して、それ以上に疑問が出てくる」と解説。「一生かかっても、どこまで解明できるか分からないが、こつこつと謎を明らかにしていきたい」と声を弾ませた。(東京報道部・照屋剛志)
なかざと・ゆりな 1999年生まれ、那覇市出身。昭和薬科高から、現役で東大理科1類に合格。卒業後、大学院に進み、修士2年の昨年度に東大総長賞を受賞。趣味はキックボクシングと映画鑑賞。