[第105回全国高校野球選手権 沖縄大会]
第105回全国高校野球沖縄大会が17日、開幕する。一時、1人だけの部員として野球を続け部を存続させた美里の古謝陽亮(3年)。新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となった大会に替わる県高野連の独自大会で優勝した八重山の活躍に感動し、東京から入学した小林大悟(同)。困難にも負けずそれぞれの思いで最後の夏に挑む。
●一時は部員1人に それでも守った野球部 美里の古謝陽亮
美里の副主将、古謝陽亮は1年だった2021年、当時の3年生が引退した後も野球を続け、約9カ月間、川上琢也監督と二人三脚で練習して部の存続に大きく貢献した。最後の夏を前に古謝は「チャンスで打席が回ってきたら、安打でチームに流れを引き寄せたい」と同校7年ぶりの夏の勝利を目指し、意気込む。
美里は1981年、95年に県大会準優勝、2013年は8強入りする実力校だった。しかし、近年は部員が減少し他校との連合チームや他部からの応援を仰いで大会に出場してきた。
古謝は部員が1人となった時も川上監督と2人で練習を続け、週末は川上監督の薦めでコザ、美里工など近隣校の練習にも参加。小学2年から始めた好きな野球を辞めることはなく「後輩が入ってくると信じていた」と1人で黙々とバットを振った。
2年生になり、願い通り後輩15人が入部したが、一方で自身の試合の出場機会は減少。昨秋の大会後は練習も休みがちになった。「心が弱くなっていた」が、今度は小中学校で共にプレーした後輩たちに励まされ、仲間がいる喜びを実感。再び野球に打ち込むようになった。「守備では取れるアウトは確実に取る」と日々、鍛錬に励む。
主将で2年の東江大二郎は「先輩が1人で部を守ってきた」と感謝し「足が速い先輩が試合で活躍できるよう、チャンスをつくりたい」と力を込めた。(平良吉弥)
●先輩に憧れ 東京から石垣島に「留学」 八重山の小林大悟
八重山3年の副主将、小林大悟は東京都からの「野球留学生」。地元・石垣島の選手に交じり、ひときわ大きな声を出してチームをもり立てる。ポジションも内野、外野をいとわず、献身的なプレーでも存在感を発揮する。
兄も「野球留学」で八重山商工野球部に籍を置いた。憧れはあったものの同じ学校は気が引けた。そんな中、八重山はコロナ禍で甲子園が中止となった2020年に県高野連が独自で開いた高校野球夏季大会で優勝。スマートフォンで中継を見た小林は、コロナ禍を吹き飛ばすように歓喜に包まれるナインの姿に感動し、同校への入学を決意した。
だが、入学後はチームは負けが続き、思うように力が発揮できなかった。小林自身も腰の疲労骨折に見舞われ、今春の大会では出場機会を逃した。しかし、最後の夏を迎えて「支えてもらった親に恩返したい」と大会に照準を合わせる。
照屋拓己監督は、声で味方を鼓舞するチームのムードメーカーの小林に期待する。「県外から1人でやってきて、けがも乗り越えた。夏への覚悟は誰よりもある」と語った。
小林は「良いイメージはできている。試合がしたくて仕方がない。笑顔で結果を残せれば」と話した。(平良孝陽)
●沖縄大会 きょう開幕
第105回全国高校野球選手権大会(8月6日開幕・甲子園)の出場校を決める地方大会は17日、開幕する沖縄大会から始まる。
第1日は沖縄セルラースタジアム那覇で開会式と1回戦2試合があり、コザしんきんスタジアムとアグレスタジアム北谷ではそれぞれ1回戦2試合が予定されている。
順調に日程を消化すれば、7月16日に沖縄で全国で最初の代表校が決まる。
▽1回戦
〈セルラー那覇、10時半〉
宮古総・宮古工連合 - 沖縄工
向陽 - 久米島
〈コザしんきん、12時15分〉
首里 - 北部農・辺土名
知念 - 八重農
〈アグレ北谷、12時15分〉
八重山 - 普天間
八商工 - 那覇国