今まで見たことがあった昔の糸満の写真は貧しい雰囲気ばかり。でも思い出の中の風景は庭が広くて赤瓦の家がいくつもあり明るかった。「記憶を美化しているのかなと思っていました」と83歳の女性は語った

▼タイムスギャラリーで開催中の写真展「よみがえる古里~1935年の沖縄」で住んでいた家を見つけた。「覚えていた通りの景色。友達と遊んだ道もある。私は間違っていなかった」。当時1歳だった女性は、戦で奪われた古里を取り戻した喜びにほほ笑んだ

▼大阪朝日新聞取材班の写真には、多くの子どもが写っている。おんぶされている子どもは元気なら80代。唐草模様の風呂敷を手にした少年は生きていれば90代のはずだ

▼連載や特集で写真を紹介したが「私が写っている」などの情報提供はまだない。82年の隔たりだけでなく、住民の4人に1人が命を落とした戦禍が影を落としている

▼取材班の車の周りに約20人の子どもが集まる1枚がある。丸刈りやオカッパ、げた履きやはだし、白いワンピースや半ズボン。思い思いの格好で珍しそうに車を見ている

▼10年後に彼らを襲う出来事を思う。写された人々の命や暮らしが、戦争で失われてしまったことを忘れてはならない。その時代に日本で何が起きていたのか考えながら、現代を見つめ直したい。写真展は30日まで。(玉城淳)