漂流したダイビング業者の男性インストラクター2人が20日、本紙の取材に応じ、「死ぬかと思った」などと振り返った。
潜水を開始してしばらくすると、先頭でガイドしていたインストラクター(43)はフロートが外れたことに気付いた。海面に浮上すると、船は流れていくフロートを追いかけていた。船長に気付いてもらおうと船に向かって泳いだが、追い付かない。やがて客5人ともう1人のインストラクターの姿が見えなくなった。
「もう駄目だ。浮いて待つしかない」と海上では何も考えず、じっとした。浮力のあるジャケットを着ていたため、溺れる心配はなかった。
ただ、「必ず助けが来る」と信じようとすればするほど頭に死がよぎる。空を見上げるしかなかった。漂流すること4時間、県警のヘリに発見され、「あの状況から助かったのは奇跡に近い」と話した。
客5人と一緒に漂流していた別のインストラクター(34)は、「リラックスしてください」「必ず助けは来ますよ」と落ち着かせることだけを考えた。客と身を寄せ合い、海で待つこと2時間。11管のヘリが見えると力いっぱい手を振った。ヘリに向かって大声で叫び、涙ぐむ客もいた。
「助かったんだ」と緊張の糸が切れ、自身も涙が込み上げてきたという。「全員無事で本当に良かった。ご迷惑をおかけして申し訳ない」と謝罪した。
今後は衛星利用測位システム(GPS)の携行や緊急時の訓練など、再発防止策に努める。
(社会部・玉那覇長輝)