愛知県春日井市にあるスタッフ2人の小さなクラフトビール醸造所で、沖縄県那覇市出身の玉城仁志(たまき・ひとし)さん(45)が醸造長としてビールづくりに励んでいます。大学を卒業後に役者になり、舞台をメーンに活動した経歴も。飲食店や免税店などさまざまな職を経て、親友と共に44歳で飛び込んだのがビール醸造の世界でした。故郷を離れ、ものづくりへの挑戦に至った背景に何があったのでしょうか。今回の「胸熱!シゴト人」は玉城さんが主人公です。(デジタル編集部・新垣綾子)

 黄金色、茶、黒、鮮やかなピンク。フルーティーなもの、キレのある苦味が特徴のもの、甘く香りが豊かなもの。

岐阜市内であったイベントに出店した「バタフライブルワリー」店主の入谷公博さん(右)と醸造担当の玉城仁志さん。「バタフライ」は店がある愛知県春日井市の形がチョウに似ていることから、入谷さんが名付けた=2023年3月(提供)
岐阜市内であったイベントに出店した「バタフライブルワリー」店主の入谷公博さん(右)と醸造担当の玉城仁志さん。「バタフライ」は店がある愛知県春日井市の形がチョウに似ていることから、入谷さんが名付けた=2023年3月(提供)

 一口にクラフトビールといっても、麦芽やホップの量、副原料との組み合わせや発酵温度などによって、味も、香りも、見た目も自在に変わる。「ビールは生き物。同じレシピでも、季節や設備など環境が違えば出来上がりに微妙な差が出る。安定した味を目指して調整を重ね、よりおいしいビールに仕上げていく過程がとにかく面白いですね」。新米の醸造長が充実した表情を見せる。

 クラフトビールは一般的に、大手メーカーが大量生産するビールに対して、小規模醸造所が手がける個性あふれるビールのこと。

 麦芽を粉砕し、65度前後のお湯につけて糖化、ろ過する。できた麦汁を煮沸してホップを投入し、ワールプールと呼ばれる作業で不要物を取り除く。麦汁を冷やしタンクに移したら、酵母を入れ発酵・熟成させるー。一連の工程を踏んで、3週間から1カ月かけて完成となる。

㊧麦芽を粉砕する玉城さん㊨麦芽の糖化作業に当たる玉城さん=いずれも愛知県春日井市(提供)
㊧麦芽を粉砕する玉城さん㊨麦芽の糖化作業に当たる玉城さん=いずれも愛知県春日井市(提供)

 職場は、愛知県春日井市で2021年11月に創業した「バタフライブルワリー」。店主の入谷公博さん(44)が販売・営業全般を担う醸造所に翌22年5月、ビールの作り手として加わった。

タンクからホップを抜く作業で失敗し、ホップまみれとなる玉城さん=愛知県春日井市のバタフライブルワリー(提供)
タンクからホップを抜く作業で失敗し、ホップまみれとなる玉城さん=愛知県春日井市のバタフライブルワリー(提供)

 元々は入谷さんと、妻でプロのフルート奏者だった光江さんが「おいしいビールを飲みながら音楽が聴ける場所をつくりたい」と、夫婦で目標を立てたのが始まりだ。ところが、光江さんが20年10月末に突然の発作に襲われ、脳腫瘍が発覚。翌11月、40歳の若さで急逝した。...