久高島の「イザイホー」の場、御殿庭(ウドゥンミャー)にあるお宮「神アサギ」。島の祭祀に詳しい琉球大学教授の赤嶺政信さん(63)=民俗学=は「祭事の前には周りの草を刈るため、写真ほど伸びることはない」と語る。大阪朝日新聞の「海洋ニッポン」(1935年7月13~22日)連載よりも前で、祭事の間が空いて草が茂る時期であることから、大阪朝日新聞の記者が訪れた時期を「35年5月ごろだったのでは」とみている(写真は朝日新聞社提供)
久高島の「イザイホー」の場、御殿庭(ウドゥンミャー)にあるお宮「神アサギ」。島の祭祀に詳しい琉球大学教授の赤嶺政信さん(63)=民俗学=は「祭事の前には周りの草を刈るため、写真ほど伸びることはない」と語る。大阪朝日新聞の「海洋ニッポン」(1935年7月13~22日)連載よりも前で、祭事の間が空いて草が茂る時期であることから、大阪朝日新聞の記者が訪れた時期を「35年5月ごろだったのでは」とみている(写真は朝日新聞社提供)
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【イザイホー】久高島に向けられた好奇の視線

2017年8月3日 19:00
文化・芸能

 久高島の御殿庭(ウドゥンミャー)で1935年のお宮「神アサギ」が写る1枚。琉球開びゃくの聖地と伝わる島で12年に1度、うま年に開かれる祭事「イザイホー」の舞台となる場所だ。

 大阪朝日新聞は、このカットを使った連載「海洋ニッポン」第9回(同年7月21日)で、イザイホーについて「女護ヶ島に残る 奇習“貞操試験”」と見出しを立てている。祭事の中で、女性が夫を裏切ったかどうかが分かる-ということが記事には書いてある。

 「確かに言い伝えはある。でも、そんな人は知らないし、祭りの全部を言い当ててもいない。取材した人には本当の意味は伝わっていなかった」。イザイホーに加わったことのある福治洋子さん(77)=南城市知念久高=は首をかしげる。

 「本当の意味」は、島で生まれた30~41歳の女性が祭りを通じて祭祀(さいし)集団に入り、家族の守り神のような存在になること。福治さんは参加した時を「無我夢中で、よく覚えていない。それぐらい懸命になるほど、大切なお祭り」と話した。

   ◇    ◇

 イザイホーは42年、歴史学者の鳥越憲三郎(1914~2007)の調査後、全国的に関心が広まった。内間新三さん(89)=同=は同年、「40歳だった母たちが出たのを見ていた」。

 後に沖縄本島との定期船運航を担い1966、78年の2回では多くの乗客を運び、宿が足りないためあぶれた人たちを家に泊めた。

 「忙し過ぎ、祭場に行く余裕はなかった。最後のは全く見ていない」

 島の外からのまなざしは、祭りと島の人々の距離感を変えたところもあった。イザイホーは78年を最後に、後継者不足で開かれていない。(「1935沖縄」取材班・堀川幸太郎)

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