今回、玉城デニー知事は国連人権理事会で口頭声明を発表し、複数の特別報告者との面談を行ったが、そのどちらにおいてもこれまでの沖縄の市民社会組織の粘り強い取り組みが大きな役割を果たした。
玉城知事の口頭声明は、沖縄が置かれた状況については8年前に当時の翁長雄志知事が行ったものとほぼ同じ内容であったが、大きく異なるのは辺野古の新基地建設が「県民投票という民主主義の手続きにより明確に埋め立て反対という民意が示されたにもかかわらず」強行されていると述べた点だ。
県民投票の結果という民意の根拠を示すことは「意思決定への平等な参加が阻害されている」という主張の正当性を確保するために欠かせない要素であり、この一文が持つ意味は非常に重い。この一文を入れられたのは元山仁士郎さんが代表を務めた団体の活動により、4年前に辺野古の新基地建設に伴う埋め立てに関する県民投票が実施できたからである。
一方で、知事がこの発言をした国際秩序に関する独立専門家との対話セッションで重要だったテーマの一つが「若者の意思決定への参加」であることを鑑みれば、県民投票実現に向けた若者のイニシアチブについて触れることができていれば、さらに議論に沿った効果的な口頭声明になっていただろう。
有害物質に関する特別報告者など複数の特別報告者との面談が実現したことを評価する声も大きいが、それがかなったのはこれまでに沖縄におけるさまざまな人権問題について沖縄の非政府組織(NGO)などが継続的に国連に対して情報提供を行ってきたからだ。
その意味では、今回の知事の行動の意義は今後の沖縄県の取り組みにかかっている。
国連は文書主義であり、口頭で情報を伝えるだけでは特別報告者らに具体的な行動を促すことはできない。重要なのは今後、知事が面談した有害物質、発展、国際秩序などの専門家に対して国際人権法にのっとった文書を作成して提出すること、そして非公式であっても訪問を実現させるなど継続的な取り組みが求められる。(国際人権法)