沖縄戦による荒廃で食糧難に陥った沖縄にハワイの県系人が送った豚550頭が、うるま市勝連のホワイトビーチに到着して27日で75年。うるま市の池宮城宏さん(63)の父の故善松さん=享年(92)=は豚を譲り受けた一人だ。宏さんは養豚業を引き継ぎ、ブランド豚「うるまの海ぶた」を手がける。「沖縄の豚食文化があるのはハワイの県系人のおかげ」。米ハワイ州マウイ島の山火事では、恩返しに寄付を集める。(中部報道部・又吉朝香)
戦前の沖縄では多くの家で豚が飼われていたが、戦禍で壊滅状態に。ハワイの県系人は寄付で集まった5万ドルで豚550頭を買い付け、1948年8月に船で輸送した。
ホワイトビーチに到着した豚は繁殖用に各市町村に配られた。善松さんは譲り受けた雌豚1頭を友人の豚と繁殖させ、本格的な養豚農家に。小学生の頃から親の手伝いをしていた宏さんは、25歳で父から養豚業を引き継いだ。
宏さんは県畜産共進会で農林水産大臣賞を受賞するなど順風満帆な生活を送っていたが、2020年に飼育していた豚が豚熱に感染。約千頭を失った。
どん底に陥ったものの、「自分には養豚しかない」と1年後に再開。農水産品直売所「うるマルシェ」の職員は宏さんの復活を耳にし、市の特産品「黄金芋」を豚の餌に混ぜブランド豚の生産を依頼した。
約1年間、配合飼料と「黄金芋」の比率を研究し、22年から販売を開始。「海からやってきた豚」にちなみ、「うるまの海ぶた」とブランド銘を付けた。臭みがなく、あっさりとしたうまみが特長。うるマルシェでは「飛ぶように売れる」(うるマルシェ担当者)という。 宏さんは今年8月にマウイ島で起きた山火事の被害を心配し、布哇(ハワイ)海豚顕彰会のメンバーや養豚関係者らで寄付金を募っている。「困った時はお互いさま。ハワイの県系人に恩返ししたい」と考えている。