
1979年開業、「安く満足」をモットーに40年余り地域に愛されてきた沖縄県那覇市首里久場川町の「あやぐ食堂」が10月末で閉店する。宮古島市伊良部島出身の店主、平良喜和子さん(74)は「物価高や人件費高騰で続けることが厳しくなった。みんなに支えられ、続けられたことは本当に幸せ」と話している。
「あやぐ」は宮古島に伝わる歌謡のこと。70年代後半、首里城跡にあった琉球大学の移転事業が始まった頃、食堂はオープンした。飲食業経験ゼロだった平良さんは知人に誘われ、幼い子ども3人を抱え店に立った。「当時の客は琉大の学生や先生たちが多かった。うちの子どもが皿洗いをしていると、『手伝うよ』と洗い物や片付けを手伝ってくれた」と振り返る。
沖縄そばやポークたまごが300円台だった時代。学生たちは学食のように入り浸ったり、夜遅くまで店内で勉強したり。「まるでやーにんじゅ(家族)のようだった」
学生たちを喜ばせようと、定食という形で刺身も加えた。価格を抑え、全ての客のおなかを満たすメニューの原点となった。15年ほど前までは、道向かいの別店舗で夜も営業した。
あやぐ食堂の売りは安さとボリューム。ここ数年の物価高と人件費の上昇で何度か値上げしたが、売り上げにコストが見合わない状況が続いた。定食は現在800円台前後。平良さんは「これ以上高くなれば、あやぐらしくないと思って」と閉店を決断した。
2日午後2時半、昼時が過ぎても店は満席で、外には行列ができていた。
小学生の時から来店しているという前川大樹さん(32)=西原町=は「ここのそば定食が最高。安くてボリューミー、コスパがすごい。つぶれてほしくない」と残念がった。南風原町から来た砂川満さん(73)もそば定食を注文。「沖縄の食堂が年々少なくなって寂しい。メニューも豊富で良かったのに」と惜しんだ。
営業は10月31日まで。午前9時~午後3時。日曜と水曜定休。
那覇市保健所によると、2023年4~8月の食品営業許可施設の廃業件数は867件となっている。長期化する物価高が影響しているとみられるが、詳細は把握できていない。