沖縄県内の書店やネットなどで販売中の「沖縄手帳」2024年版では、宮城恵輔さん(39)の絵画「月桃」を掲載している。宮城さんは両手が不自由なため、口にタッチペンをくわえてiPadで絵を描く。沖縄手帳社発行人の真栄城徳七さん(72)は「突き抜けた優しさ」を作品に感じ、手帳への採用を申し出た。24年版で刊行30年となる。

 沖縄手帳では12年版から、作者の内なる衝動のままに表現した「アール・ブリュット(生の芸術)」作品を手帳の後ろ見開き面に掲載している。真栄城さんは「純真な気持ちが伝わってくる作品を見て、得られる優しさや安心感が手帳のユーザーには必要ではないか」と考えるからだ。

 宮城さんは、県内障がい者アーティストの発掘・発信を担う団体「ドアレスアートオキナワ」理事兼アーティスト。同団体主催の展示販売会に出展していた「月桃」が真栄城さんの目に留まった。

 「月桃」は、宮城さんが絵を描き始めた20年ごろの初期作品の一つ。空色をバックに咲く月桃が鮮やかで、真栄城さんは「つらい経験もしているだろうが、絵は明るく爽やかで突き抜けた優しさがある」と評価する。音楽家・海勢頭豊さんの作詞作曲で、平和を願い歌い継がれる代表作「月桃」をほうふつさせたという。

 沖縄手帳の発行部数は約3万部。宮城さんは作品が手帳に掲載されたことに「3万人のフォロワーに紹介してもらうようなもの。『ドアレスアート』の知名度を上げたいので、大変うれしい」と話した。(学芸部・勝浦大輔)