個人宅で料理や掃除、洗濯といった日常の家事をプロが担う家事代行サービス。日本では2000年代から利用が増えたとされ、女性の社会進出や少子高齢化に伴い、市場が急拡大しています。一方で社会はいまだ、女性の家事負担が重く、家事を外注するとなれば「ぜいたく」「手抜き」とみる風潮も根強くあります。4児の父ながら、家事は共働きの妻に任せっきりの沖縄タイムスの男性記者が、家事代行スタッフを体験。沖縄県内の事業者や利用家庭にも話を聞き、需要を伸ばすサービスの現場をウオッチしました。(中部報道部・砂川孫優、デジタル編集部・新垣綾子)

 「全く自信がない・・・」。4児の父でありながら、家事に無頓着な私。普段は共働きの妻に一方的に“キャプテンマーク”を託し、任せっきりだ。不安を抱きながら挑んだ家事代行「SUNJU(サンジュ)」(本社・宜野湾市、宇江城雄斗代表)のスタッフ体験。10月4日午後4時、到着したのは中城村南上原の閑静な住宅街だった。

家事代行の依頼者宅で、風呂場を掃除する砂川孫優記者=2023年10月4日、沖縄県中城村(比嘉直志撮影)
家事代行の依頼者宅で、風呂場を掃除する砂川孫優記者=2023年10月4日、沖縄県中城村(比嘉直志撮影)

 アパートを訪ねると、依頼主の20代女性が笑顔で迎えてくれた。出産を控え、家事代行サービスを週1回利用しているという。早速、同行した女性スタッフが慣れた手つきで作業に取りかかった。

 この日は「2時間で料理5品を作り置き」のコース。さすがに“新人”が料理すると日が暮れるので、今回はボランティアとしてトイレと風呂場、洗面所やフローリングを掃除することになった。

 掃除は「物を動かしたら元に戻す」原状復帰が基本原則。さらに、最後には掃除用具や手を洗うので、水回りや洗面所はラストが通例だ。その上で「一つ一つの作業を丁寧にすることが最重要」と指導を受けた。

洗面所の床に掃除機をかける砂川記者
洗面所の床に掃除機をかける砂川記者

 気合を入れて、トイレから取りかかる。「物を壊さないように」と緊張する。自宅以外のトイレを掃除するのは高校の時以来だ。チェックに来た担任教諭に、何度もやり直しを命じられたことを思い出しながら仕上げた。

 続いて風呂場へ。自宅ではジャバジャバと水をまき散らし、洗剤でゴシゴシ洗って流すだけだが、ここは節水を意識しながら浴槽や壁、床の水あかや細かな汚れを取り除いて拭き上げる。

 我流しか知らない中で、効率的かつきれいなやり方を模索するうちにタイムリミットが迫り、焦って作業が雑になっていく。台所で女性スタッフが肉料理などをテキパキと完成させる横で、汗を流しながら必死に手を動かした。

 代行サービスに家事を任せている間、依頼主は別室で仕事に励んでいた。家事に充てる時間を、こうして仕事に転換できるのもサービスを利用するメリットだ。スタッフは大きな物音を出さないようにし、依頼主の日常をサポートする意識も心得の一つだそうだ。調理の様子も見学する予定だったが時間が足りず、予定の2時間を迎えた。

あり合わせの食材で5品を作った家事代行「サンジュ」の女性スタッフ(右)と砂川記者
あり合わせの食材で5品を作った家事代行「サンジュ」の女性スタッフ(右)と砂川記者

 「何とか間に合った」。ホッとしたのもつかの間、スタッフから「掃除と料理はセットのことが多く、基本は一人で全て対応しています」と教えられ、がくぜんとした。まさに...