スポーツ競技にはドラマがある。記録はもちろんだが、想像を超える努力と挑戦を重ねてきたアスリートたちの姿はファンを魅了してやまない。ロンドンで開かれた「世界陸上」の観戦に少々寝不足が続いた

▼印象的だったのは、男子100メートルの決勝。米国のジャスティン・ガトリン選手が、ウサイン・ボルト選手を破って優勝が決まった瞬間、観衆が浴びせたブーイングだ。過去のドーピング違反への嫌悪感の現れといえるものだった

▼過去2度の違反と資格停止処分の事実は消えることはない。厳しい目が向けられ続けるのも当然のことだろう。だが、世界の頂点を目指し奮起してきた結果にバッシングだけを向けるのは、あまりにも悲しくないか

▼少なくとも罪を償い、再起へのルールに従ったからこそ出場が認められたはずだ。ガトリン選手は「気にしない」と観衆の感情に理解を示した

▼ふに落ちないのは、国際陸上競技連盟のトップがガトリン選手の資質を疑問視するコメントをしたこと。復帰を認めたのは連盟である。違反があった選手の復帰の有無など、基準をあらためて世に問うたらどうか

▼今回のブーイングには賛否がある。寛容さを求めるつもりはない。フェアプレーが求められる厳しい世界だからこそ、向けられるべき矛先は個人だけであってはならないと思う。(赤嶺由紀子)