今春の人事異動で、記事を書くより他人の原稿を見る機会が多くなった。読者投稿や執筆依頼の原稿など、外部の方々とのお付き合いが増えたが、その中で多いのが文字数のやりとり
▼当然ながら紙面に収まる行数や文字数は限られ、「原稿の分量」は新聞の編集作業の大きな関心事の一つだ。一方で、書く側は細かなニュアンスや経緯、自らの考えを「相手にしっかり伝えねば」と思うほどに言葉が増える
▼名護市辺野古への新基地建設をめぐり、初会談した翁長雄志知事と菅義偉官房長官の冒頭発言全文を掲載した6日付紙面は、両者の立場が鮮明だ。持ち時間は互いに15分、紙面を埋めた文字数は知事が長官の約1・7倍
▼痛みを押しつけながら真摯(しんし)に向き合うことを避け続けた相手に、戦後70年の歴史を振り返り沖縄の立場を主張し、県民を代弁する。時間と紙幅が許せば文字数はさらに増えたはず
▼基地建設に伴う環境破壊や事件事故の懸念には一切触れず「振興策」「一括交付金」「USJ」など、蜜だけちらつかせる長官の発言は昨年の名護市長選を思い出させ、うんざりする
▼衆院選まで五つの選挙で全敗したにもかかわらず、沖縄の「民意が分からない」と言ってのける権力の厚顔さ、「もう基地はいらない」との沖縄の思いを、しっかりと文字に託して届けたい。(儀間多美子)