挿画:伊藤健介
挿画:伊藤健介

 キッチンカウンター脇の通路をふさぐように立ち尽くしていたことに気づき、舞花まいかは顔を赤くして道を空けた。深緑色のエプロンをつけた母の後ろ姿を眺めながら、改めて肝に銘じる。──気づかれてはいけない。不審がられてもいけない。だって、もしバレてしまったら、何と説明していいか分からない。

 外の嵐さながら乱れに乱れている胸の内を誰にも悟られないように、舞花は視線を下に向け、残りのご飯茶碗ぢゃわんと麦茶のグラスをダイニングテーブルに運んだ。いただきます、と四人で声をそろえると、幼い頃からこの家で繰り返してきた日常が自然と身体に溶け込んできて、やっと人心地がつく。

 うそみた...