恩納村の琉球村では、16~97歳までの全スタッフ約160人に童名(わらびなー)がある。館内放送では必ず、しまくとぅばを使い、童名を呼び出す。観光客にウサギと勘違いされる「うさぐゎー」や「しままーす」ならぬ「よねまーす」(米増さん)。童名をきっかけに会話が弾む日も多い。創業者が約30年前に始めた遊び心なのだという。(政経部・平島夏実)

冷暖房のない古民家で「夏は暑さんどー、冬はひーさガタガタ-して童名の村民になりきる」と話すスタッフら=15日、恩納村山田の琉球村

冷暖房のない古民家で「夏は暑さんどー、冬はひーさガタガタ-して童名の村民になりきる」と話すスタッフら=15日、恩納村山田の琉球村

観光客に配慮

 琉球村の開村は1982年。創業者の上地長栄さんが「琉球村をうちなーらしさでいっぱいにしたい」と、スタッフの呼び名に童名を取り入れた。

 登録有形文化財の古民家など11軒が昔の暮らしを伝える中、スタッフ間の業務連絡に観光客を引き込まないようにとの工夫だ。

 版画家の名嘉睦稔さんや歴史学者の高良倉吉さんに琉球王朝の官職を教わり、代表取締役社長は「世主大親(ゆぬしうふやー)」、管理職は「親方(うぇーかた)」や「親雲上(ぺーちん)」に言い換えた。営業・企画戦略担当は「あちねーがたー」、踊り担当は「もーやー」、事務所は「すぬがたー」という具合だ。

採用時に命名

 スタッフには採用時に童名を贈る。約30年働く宇栄原栄子さん(61)は読谷ゆかりの歌人、吉屋チルーにちなんだ「ちるー(鶴)」。孫にもそう呼ばせるほど気に入っている。県外の観光客は童話「青い鳥」に出てくる兄妹「チルチル」と「ミチル」を連想し、不思議がるという。

 今帰仁城主の側室だった志慶真乙樽にちなんだ「うとぅだる」、琉歌に詠まれた「まるみかなー」、組踊「二童敵討」に出てくる「ちるまち(鶴松)」など、歴史や文化的な名で活躍するスタッフも。

 沖縄芝居を参考に、宇栄原さんが伝統的な童名を書きとめているが、近年のスタッフの数に追いつかず不足気味。最近は、野菜や魚、昆虫の名や、陶芸担当に「あかんちゃー(赤土)」、明るい性格の持ち主に「てぃーだ」と命名する。

 童名になじみがない、県外出身者や若い世代にも好評だ。

 当山菜々恵さん(32)=東京都出身=は、趣味の創作エイサーで日焼けしたため「なんちち(おこげ)」に。「沖縄らしくていいかな。お客さんと話すネタにもなるし」と笑う。「えいぐゎー」こと岡本怜威さん(19)=うるま市出身。「『やなわらばー』とかインパクトのある名前でも大歓迎」と話す。

 「ひじゃやー(左利き)」こと島袋昌英さん(53)を呼び出す館内放送は「あちねーがたー(営業担当)ひじゃやー(左利き)。うちじり(内線)36番までぃ えーじ(合図)しみそーれー」といった調子。

 「ひーじゃーやー(ヤギ料理屋)」がどうしたのかと首をかしげる観光客もいるが、島袋さん本人は「汁も刺し身も苦手」と笑った。