空を舞う白球の放物線、スタンドのどよめき。バックネット裏からの眺めは圧巻だった

▼この夏、高校野球の応援取材で甲子園球場の記者席に初めて座った。NHKの生中継ブースがある辺り。ほんの数分間だったが、他社の記者がせわしなくスコアブックをつける中、1人ひそかに感動に浸った

▼今大会の本塁打数は68本。2006年の60本を大幅に塗り替えた。広陵高の中村奨成選手は6本放ち、1大会個人最多本塁打を更新。記録ずくめの“打高投低”となった

▼甲子園には1991年まで、外野の左・右中間に鉄柵を設け、本塁打を出やすくする「ラッキーゾーン」があった。今や、それがなくとも白球が次々とスタンドに飛び込む。体格や打撃技術の向上に加え、好投手の少なさを挙げる専門家もいる。フルスイングを良しとする球界全体の流れも影響しているようだ

▼興南高が初戦を迎え、満員の4万8千人の観客であふれた大会4日目。記者や大会関係者らが行き交うバックネット裏に、かつて大会を沸かせた好投手の姿があった

▼今季不振にあえぐプロ野球・阪神の藤浪晋太郎選手。人知れず、母校の試合をじっと見つめていた。5年前に大阪桐蔭高で春夏連覇したひのき舞台。低迷から脱出する糸口を甲子園のマウンドからたぐり寄せたい、ともがいているように映った。(西江昭吾)