労働基準法に違反した疑いで、沖縄県内老舗企業の社長らが那覇労働基準監督署に逮捕、送検された事件で、事業主が労働者に時間外労働させるために必要な労使協定「三六(さぶろく)協定」に改めて焦点が当たっている。残業がある職場ならあって当然、なければ「違法」の協定。県内企業の多くが締結していないという見方もあるが、沖縄労働局も実態を把握し切れていない。三六協定を結んでいますか-。(社会部・篠原知恵、新崎哲史、川野百合子、政経部・又吉嘉例)

工事現場(資料写真)

工事現場(資料写真)

 労基法36条を根拠に時間外労働の限度時間を定める「三六協定」は法定時間(1日8時間、週40時間)を超えて残業させる場合、従業員数の多少にかかわらず、一人からでも、労使間で結ばなければならない。だが、実態はそうなっていない。「協定の存在そのものを聞いたことがない」。那覇市内のコンサルタント会社に勤める男性(30)は首をかしげる。

 職場に労働組合がなくても「労働者代表」が結ぶことができる。しかし、県内労組関係者によると、これが「悪用」されるケースもある。

 例えば、人事の関係部署など経営者側に都合のいい職員を「代表」として協定を締結。労働局に届け出る“対策”をとる企業もあるという。話し合いもないまま協定が結ばれ、多くの労働者に存在が見えなくなってしまう。

 沖縄労働局によると、県内の三六協定の届け出数は近年、増加傾向にあり、2016年は前年比469件増の1万1798件だった。ただ、1社が年に複数回提出することもあるため、事業者数とは一致しない。協定には有効期限もあるが、期限切れの通知や確認などは行っていないという。

 「県内企業の大半は結んでいないのではないか」。組合のない中小零細企業の労働者らの相談を受ける「連合おきなわユニオン」の恩納親之助書記長はいぶかる。これまで相談を受けた企業の8~9割に協定がなかったからだ。「残業させ、結果的に困るのは経営者。なぜ結ばないのか」

 労働問題の解決に向けて、まず三六協定を結ばせることも多い。同ユニオンの松田原昌輝執行委員長は「残業の上限を明確にして、経営者に労働基準法を意識させる一番の材料」と強調する。

 県内の社会保険労務士の加藤浩司さんは「詳細は言えないが、今回の送検、逮捕の反響はある」と明かす。「残業が必要なら労使がいま一度、適切な業務実態を確認すべきだ。各事業所は(一過性の)事件として終わらせず、適正労働や支払いなど、時間をかけて正しい形に持っていくことが求められる」と指摘した。