政権が世論の支持を広げるためにマスコミ報道を通して「印象操作」をするのは常とう手段である。安倍晋三首相も、第1次政権時の失敗の反省から、メディア戦略を重視していることはよく知られる

▼情報戦であるから、受け取る側も目と耳の健康に神経を使い、取捨選択していかなければなるまい。仕掛ける側には、耳当たりがいい言葉に徹せず、過剰な演出をしないということは基本のルールであろう

▼放送法の解釈を意図的に利用してテレビ局ににらみをきかそうとする政府や与党であるから、さもありなんだが、国内だけでなく海外メディアにも攻勢をかけているというから、了見が分からない

▼海外有力紙の東京特派員の記事に、外務省幹部が大っぴらに抗議し、記事中に登場する識者の人選にも細かく注文をつけていた。28日付の朝日新聞に載っていた

▼政府にとって都合が悪い記事を書いた特派員について「金がからんでいる」と中傷もしたという。他の特派員が取り上げた識者に関しては「学術界では認められていない」とおとしめ、別人を薦めた。情報戦とはいえ、基本ルールもあったものではない

▼日本の姿を世界に伝える特派員たちは、そんな工作に反感を持つだろう。日本の印象も悪くしている。結局、誰を利する結果になるか、考えれば分かるはずなのだが。(宮城栄作)