県出身の女優・満島ひかりさん主演の映画「海辺の生と死」は、ことし生誕100年の作家・島尾敏雄さんが、後に妻となるミホさんと奄美群島の加計呂麻島で出会ったときのエピソードを基にした作品だ

▼太平洋戦争末期、特攻艇「震洋」部隊の隊長として島に赴いた青年と、若い女性の激しい恋が美しい自然を背景に描かれている

▼映画と同じ題のミホさんの短編集には集落の人々から尊敬を集めていた両親の思い出や島での暮らし、沖縄芝居の旅芸人の姿など、戦前の故郷の姿が島の言葉を交えたみずみずしい文章でつづられている

▼本同様、映画で印象的なのが随所にちりばめられた島の言葉の数々だ。例えば「タシマ エン ムスビバ ウトゥサン ナダ ウトゥシュンドゥカナ(他の島の人と縁を結べば 落とすはずのない涙を落とすことになるよ)」と満島さんが歌う場面では奄美の島唄に特有な唱法と、かすれ気味の声に恋人を思う切なさがにじむ

▼満島さんが沖縄出身だという素地もあるのだろうか。平面的に響く共通語でのせりふに比べ、母語の表現力の豊かさが伝わる

▼かつて島尾敏雄さんが日本という国の多様性を見つけるため提唱した「ヤポネシア」という造語。映画で使われた言葉の美しさが、ヤポネシアという考え方が今も有効なことを改めて示している。(玉城淳)