沖縄に華やかな菓子文化があった。食文化研究家の安次富順子さんが出版した「琉球菓子」はページをめくるたび心が躍る。中国やポルトガル、日本から入り、独自に進化した菓子は色が多彩で形がユニーク

▼どう伝わり、どう食されたのか。琉球王朝時代の航海や宴席の風景を想像してみたりする。なじみ深い菓子もあるが、材料などわずかな文献情報を手掛かりに、安次富さんが古老から聞き取り、試作を重ねてよみがえらせたものもある

▼「記録を残しなさい」。背中を押したのが新垣菓子店の創業者、新垣淑扶(しゅくふ)さん(故人)の言葉だった

▼1967年3月9日の本紙に淑扶さんの記事が載っている。「長く伝えるには私たちの生活の一部にとりいれ生かしていくこと」。洋菓子に追いやられる琉球菓子の行く末を案じ、料理学校で作り方を指導していると語っている。安次富さんは母の新島正子さん(故人)が経営するその料理学校で直接手ほどきを受けた

▼淑扶さんとの出会いから50年。引き継いだ思いを安次富さんは形にした。再現可能な菓子がまだあり、今後も研究を続けるという。バトンを受け取った者の責任感が駆り立てるのだろう

▼同僚は菓子作りを覚え始めた小学生の娘に本をプレゼントしたいという。淑扶さんのこだわった「記録」が次の世代に継がれていく。(高崎園子)

琉球菓子
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安次富順子
沖縄タイムス
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