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社説[国際NGOに平和賞]核禁止条約 実現に奔走

2017年10月7日 09:05

 今年のノーベル平和賞に、核兵器廃絶を目指して活動してきた国際NGOの「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)が選ばれた。

 核兵器禁止条約の採択に貢献したことが評価された。核兵器を巡る危機的な時代状況を色濃く反映した受賞だ。

 ノーベル賞委員会は「核兵器を手に入れようとする国が増え、核兵器の脅威が現実のものとなっている」と指摘し、北朝鮮を名指しで非難。核保有国に対しては、核兵器削減に向けた「真剣な交渉」を始めるよう求めた。

 ICANはスイスのジュネーブに本部を置く国際NGOで、世界各国にパートナー団体や国際運営グループなどの幅広いネットワークをもつ。

 被爆国日本とは特に関係が深い。これまで被団協など日本の被爆者団体と連携しながら、各国の政府や国際機関に働きかけ、世界的な規模で核兵器禁止条約制定に向けたキャンペーンを展開してきた。 NGO「ピースボート」の川崎哲共同代表は、ICANの国際運営委員で、中核的な存在だ。

 広島、長崎の被爆者と二人三脚で歩んできたことが条約の採択につながり、条約の採択がノーベル平和賞をもたらした、といえる。

 とりわけ、核兵器が「壊滅的な被害をもたらす非人道的兵器」だと指摘した倫理的な側面からの訴えは、多くの人びとを動かした。

 ノーベル平和賞は、実質的には被爆者とICANの共同受賞と言ってもいいような内容だ。

■    ■

 7月に採択された核兵器禁止条約は、国連に加盟する193カ国のうち、122の国と地域が賛成し採択された。

 核兵器の使用、製造、開発、実験などを全面的に禁じ、核兵器を非合法化する画期的な内容である。前文で「ヒバクシャの受け入れ難い苦しみに留意する」とも明記されている。

 広島や長崎の核廃絶運動がなければこのような内容の条約は決して採択されなかっただろう。

 ただ、この条約には大きな難点がある。米国やロシアなど核保有国が条約制定交渉に参加せず、米国の「核の傘」に頼る日本なども参加していないことだ。核保有国や日本などは、条約が核保有国と非核保有国の溝を深めた、と指摘する。

 確かに問題点は多いが、それ以上に問題なのは、被爆国の政府が核廃絶に向けた議論をリードすることができず、被爆者からも各国のNGOからも信用をなくしかけていることだ。

■    ■

 核廃絶の取り組みにノーベル平和賞が授与されるのは今回が初めてではない。2009年にはオバマ前米大統領がプラハ演説で「核なき世界」の実現に向けた目標を示し、平和賞を受賞した。

 しかし、核保有国の核兵器の近代化や北朝鮮の核・ミサイル開発など、核を取り巻く環境は悪化する一方だ。

 この流れを食い止めるためには、核廃絶の機運を世界的に高めていく必要がある。ICANが受賞した意義もそこにあるというべきだろう。

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