少し前に東京で、本の装丁の展示会を見た。本とは思えないようなデザイン、遊び心あふれる形や色、17世紀西洋の豪華な洋装本など、触れるだけで本の魅力を堪能できた

▼最近は、比較的廉価な文庫本でもユニークな装丁が目を引く。その文庫本を巡り、文芸春秋の松井清人社長が全国図書館大会で発言した内容が話題になっている。「できれば図書館で文庫の貸し出しはやめていただきたい」

▼版元にとって収益の屋台骨となっている文庫。2014年ごろから販売額は大幅減少の一途をたどっているという。それは作家の死活問題でもあり、危機感から出た言葉なのだろう

▼だが、図書館側は簡単にはうなずけない。利用者ニーズに合わせて、サービスを提供することも重要な役割だから。日本図書館協会は双方の議論が必要とし、よりよい読書環境を考えたいとする

▼松井社長は「文庫は自分で買うという空気が醸成されることが重要」とも訴える。ただ、廉価とはいえ読む側にとっては懐事情にも影響する。貸し出しをやめたとしてもすぐに、売り上げが回復するかは分からない

▼知る自由を保障する図書館機能の期待も大きい。思いは必ずしも相いれないが、まずは読む人がいなければ本の魅力も広まらない。買って読む、時には借りて読む習慣があってもいいと思う。(赤嶺由紀子)