かつてプロ野球ドラフト会議といえば、この人だった。元パ・リーグ広報部長の故伊東一雄さん。「パンチョ」の愛称で親しまれ、1991年まで司会を務めた

▼「第1回選択希望選手…」。甲高い張りのある声で、指名された選手の名前を読み上げた。小気味よい名調子は、指名を巡る数々の人間ドラマとともに野球ファンの記憶に残る

▼今年の注目は、高校通算最多111本塁打を放った清宮幸太郎内野手(早実高)。高校生では過去最多タイの7球団が1位指名し、日本ハムが交渉権を得た。夏の甲子園で活躍した中村奨成捕手(広陵高)ら話題の選手も多かった

▼県関係は育成枠を含めて7人が指名を受け、憧れのプロへの扉を開けた。全12球団が指名した総数は114人。難関とされる司法試験の今年の合格者1543人と比べても、いかに狭き門かが分かる

▼伊東さんが最後に司会した91年、オリックス4位は愛工大名電高の鈴木一朗(イチロー)選手だった。全体の41番目に指名された無名の18歳は日本球界だけにとどまらず、海を渡り、米野球殿堂入り確実の偉大な選手へ飛躍した

▼同じ年の広島4位は金本知憲選手、大洋(当時)6位は三浦大輔選手。下位指名でも長く活躍した名選手が名を連ねる。実力勝負のプロの世界。入ったその先は、指名順位は関係ない。(西江昭吾)