「四歳の頃、父は私を遊郭に売り渡した」。昨年9月、アリゾナ州の自宅で88年の人生を閉じた著者、正子さんの自伝はこの文章から始まる。かつて存在した辻(つじ)遊郭に売られた1932年頃の出来事だが、鮮やかな記憶と共に当時の心象が綴(つづ)られていく。