1日、沖縄県名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブに向かって、1人でブーイングする男性がいた。ベトナム戦争に反対し、脱走した元米兵のクレイグ・アンダーソンさん(70)だ。「軍事力を誇示しても自国の平和は守れない」が持論で、基地を強化すれば周辺の国々を緊張させ、緊張が長く続けば核戦争につながると考える。世界各地に170カ所以上もの基地を持つ米国と、自衛隊だけでは足りないから米軍の力も必要だと信じる日本政府に「一体どこまで持ちたがるのか」と顔をしかめた。
脱走したのは20歳の時。米軍横須賀基地に停泊中の空母から逃れ、市民団体の手引きでスウェーデンに渡った。来日はそれ以来となる。辺野古での抗議活動は道向かいから見守った。
衝撃を受けたのは機動隊が基地外ではなく、中から出てきて座り込みを中止させたこと。「日本政府は市民ではなく、米軍の方を向いている」と感じた。
抗議する住民、警察官、埋め立て資材を運ぶダンプカー運転手それぞれの表情を見て、「ここにいるみんなが不幸な気持ちだと思う。とはいえ、座り込む以外に抗議の仕方が見つからないのも分かる」と戸惑った。
米国民の間ではイラク・アフガン戦争が14年続き、厭戦(えんせん)ムードが漂う。軍事費は国家財政を大きく圧迫している。「だからきっと、米軍基地はこの先長くは続かない」。ブーイングをした手を、祈るようにペットボトルのお茶へ添えた。(政経部・平島夏実)