民俗学とは「一つの民族の古来の伝承を研究対象とする学問」(『広辞苑』)とある。なんだか自分とは関係ない学問と思ってしまいそうだが、本書を読むと現在の生活の中にある学問なのだと分かる。私自身は民俗学を学んだことはないのだが、本書は一般の方向けの市民講座で沖縄のムラや門中、祖先祭祀(さいし)、位牌(いはい)、祭祀の継承などについて説明されたもので、非常にわかりやすい内容となっている。

ボーダーインク・1728円

 民俗学を専門とする著者は、恩師の「あなたは女性として、主婦として、常に生活者の視線で民俗文化の変容を捉えなさい」という教えを大切にしてこられたという。確かに本書にも生活者としての視点からのエピソードなどが盛り込まれ、読者は身近に感じることができる。

 沖縄の伝統的間取りの一番座や二番座について、不動産業者のCMではないけれど、知り合いのウチナー嫁の方が「イチバンジャー」って「一番座」だったんだ、と納得していたのが印象的だった。さらに秀逸なのがお祝いでの席順についての話だ。あなたは一番座に座るのか、二番座に座るのか、それとも…。一番座の方が格が上だと言われ、年齢や男女の差によっても変わるという。知っていると「あの人はよく分かっているね」と評価が上がるかもしれない。さらに「チー(血)」と「シジ」の考え方の説明を読むと、門中の仕組みと成り立ちが理解できる。

 本書のタイトルでもある位牌(トートーメー)に関してはその歴史や種類、そして継承と禁忌について語られる。トートーメーはいつからあるのか。長男が継がないといけないのか。女性が継いではいけないのか。そして少子化の流れの中での今後の継承問題など多くの問題が残されているのも事実。

 そのようなことも含めて本書は今を生きる一種の実用書でもあり、さらにより深い文化の認識につながる1冊である。

(池宮紀子・ボーダーインク編集者)

トートーメーの民俗学講座―沖縄の門中と位牌祭祀
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