7年前まで看護師だった女性が、海の中を舞台に世界初となる調査を次々と成功させている。沖縄県本部町の美ら海水族館で飼育員を務める村雲清美さん(49)だ。7月にはガラパゴス諸島で、野生のジンベエザメの採血を世界で初めて成功させた。「前職の経験がかなり役立っている。楽しいですよ」と充実した表情を浮かべた。(社会部・宮里美紀)

世界で初めて雄の野生ジンベエザメの血液採取に成功した村雲清美さん(前列中央)と調査チームのメンバー=7月、ガラパゴス諸島(美ら島財団提供)

 村雲さんは愛知県出身。同県内の病院で、主に外科の看護師をしていた。元々海が好きで、27歳の頃に趣味でダイビングを始めると「もっと南の海の近くに住みたい」との思いが募った。転職を繰り返し、39歳で沖縄に移住した。

 移住後も看護師として働いていたが41歳の時、沖縄美ら島財団の美ら海水族館の救護室に就職。「海の隣で働けるなんて」と心が弾んだ。毎朝、白衣を着たままイルカなどを観察する姿が同財団の獣医師の目に留まり、その後、飼育員に転身したという。

 飼育員として主に生物の健康を管理するため、観察は欠かせない。採血やエコー撮影をする時に動物のご機嫌をみたり、おとなしくなるツボを押さえたりすることができる。「血管がどこにあるかはある程度想像がつくし、血液中のホルモンバランスなどから体調が分かる。看護師の経験が生きている」

 ガラパゴス諸島での調査ではメンバー9人のうち、村雲さんが唯一の女性で最年長。10日間海上で過ごし一日3回、水深約30メートルでジンベエザメを待ち伏せた。体力のいる仕事で、流れが速く遭難の危険性もある中、世界初の採血に成功した。「看護師の時、まさかジンベエザメに針を刺すとは想像もしていなかった」と笑う。

 同財団水族館事業部統括の佐藤圭一さんは「海に潜り、直接生物と触れ合う女性調査員は世界的にも珍しい。これまで採血した生物数も相当で、経験が技術に結びついている。他の人にはできない」とたたえる。

 今の仕事は「向いている。海の生物の謎を探求できてやりがいがある」と力を込める村雲さん。「海外での調査も楽しかった。もう1度行きたいな」。次の機会が待ちきれない様子だ。