暴行問題を起こした大相撲の横綱日馬富士関(33)が、引退を表明した。

 暴行は本人も認めており、その内容は目撃証言でもほぼ一致している。鳥取県警が年内にも傷害容疑で書類送検する見通しで、引退は力士を代表する横綱として当然といえよう。むしろ、後輩に暴力を振るった後も変わらず巡業に出続けたことを考えれば、暴力に対する認識に、著しい落差があったと見なされても仕方ない。

 引退会見でも日馬富士関は「弟弟子の礼儀がなっていないときに直し、正し、教えることが先輩の義務」と、暴行の背景に貴ノ岩関の態度があったことを示唆した。しかし、礼儀を教えるのに暴力という手段を用いるのは本末転倒だ。しつけや教育と称して体罰が行われる理屈と全く同じで、発言は看過できない。

 これに対して日本相撲協会の八角理事長は、「どのような理由があろうとも、暴力を肯定することはできない」としたが、その通りだ。

 角界ではこれまでもたびたび暴力行為が問題となってきた。

 2007年に親方や兄弟子3人による集団暴行で、当時17歳だった若い力士が死亡した事件は記憶に新しい。10年には、当時の横綱朝青龍関が知人を暴行し引退に追い込まれた。

 相次ぐ暴行問題からは、「かわいがり」と称される角界独自の指導方法が、先輩から後輩へ、師匠から弟子への暴力やしごきの言い訳として使われてきた一面も明らかになった。

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 角界の体質そのものに、暴力を肯定する雰囲気があるのではないか-。

 力士の集まりの中で起きた日馬富士関の暴行は、一個人だけでなく、角界全体の問題としてとらえなければならない。

 この間、協会の対応が後手に回ったことにも疑問が残る。日馬富士関の暴行を知ったのは発生から1週間後で、さらに報道されるまでの間、何の措置も取らなかった事実は、暴行問題に対する協会の自浄能力のなさを露呈している。

 また、暴行を受けた貴ノ岩関の師匠の貴乃花親方も、警察に捜査を委ねたものの、協会の調査には応じていない。自身が理事を務め、巡業部長として身を置く協会の問題解明に協力しない姿勢は、理解できない。

 同じ組織の中で暴行問題が繰り返されている以上、氷山の一角である可能性が高い。

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 協会は30日の定例の理事会で暴行問題への対応について議論した。会合は3時間余りの異例の長さにわたって開かれた。暴行問題の解明にあたっている危機管理委員会から中間報告がなされたという。

 力士同士の集まりでなぜ暴力行為が発生したのか。暴力の理由を被害者の言動に求めるやり方ではなく、「何があっても暴力は肯定せず」とする八角理事長の先述の言葉に基づく検証が必要だ。

 その上で、二度と暴行問題が起きないよう、協会による具体的な暴力防止の取り組みが何より求められる。