核・ミサイル開発を加速させる北朝鮮を念頭に置いた対応とはいえ、国民への説明も国会での議論もない「なし崩し導入」である。

 政府は19日、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」2基の導入を決めた。
 防衛力整備の指針となる「防衛計画の大綱」や中期防衛力整備計画(中期防)にもない新規装備を、閣議で決定するという異例の措置だ。

 現行の日本の弾道ミサイル防衛(BMD)は、(1)弾道ミサイルをレーダーで探知し、海上自衛隊のイージス艦が迎撃ミサイル「SM3」を発射して大気圏外で迎撃する(2)撃ちもらした場合、航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオット「PAC3」が地上から狙う-という二段構えである。

 イージス・アショアは弾道ミサイルを地上から迎撃する第3のシステムだ。イージス艦と同様の機能を地上に配備することで、運用が容易となり、部隊の負担も軽減できるとしている。

 小野寺五典防衛相は記者会見で「可及的速やかに対応してほしいという国民の要請」を強調した。だがこれまでシステムの位置付けや装備の実情についての説明はほとんどされていない。

 配備候補地の秋田市と山口県萩市からは、強力な電磁波の影響や標的になるかもしれないとの不安の声がもれ始めている。

 2基で2千億円近くとなる巨額の費用についても、税金の使い道として妥当なのかといった声が上がる。

 日米一体化のリスク面を含め、国会はきちんとチェック機能を果たしてもらいたい。

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 防衛装備を巡っては、防衛省が今月8日、射程が約900キロに及ぶ長距離巡航ミサイル導入に向けた費用を来年度予算案に追加要求した。概算要求には盛り込まれず、予算編成の過程で突然出てきたものだ。

 巡航ミサイルは翼で姿勢を保持しながら、ジェットエンジンで推進する無人誘導のミサイル。900キロの射程があれば、北朝鮮の制空権内に接近することなく弾道ミサイルの発射台をたたく「敵基地攻撃」が可能だ。

 小野寺防衛相はイージス艦防護が目的で、憲法9条に基づく「専守防衛には反しない」と説明する。

 しかし敵基地攻撃能力を持つ以上、「専守防衛」からの実質的な転換とみられても仕方がない。

 国会論議を軽視した拙速な決定である。

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 安倍政権下で防衛費は増え続け、来年度は過去最大の5兆2千億円に上る見通しだ。

 北朝鮮情勢への対応が防衛強化の動きにつながっているのだが、同様に韓国では自前の核武装論が出始めている。さらに中国ではトランプ米政権の対中戦略を念頭に国防費の増額が続いている。

 自国の安全を高めるための防衛力増強が、他国の軍拡を招き、結果として緊張を高めている。

 東アジアで進む軍拡競争に歯止めをかけ、安定した地域秩序を形成するという目標を見失うことがあってはならない。