◆実を結んだラブコール

映画や音について話し合う宮島さん(左)と知名さん。話はつきません。

 そんな私の緊張を和らげるように、シアターから上映中の映画の音楽や登場人物たちの声が漏れ聞こえてくる。

 宮島さんは「この漏れてくる音を聴くのも好き。この音も知名さんのオーディオから流れているんだよ」とにこにこしながらいう。

 コラボレーションのきっかけは、映画音楽を題材とするドキュメンタリー映画「すばらしき映画音楽たち」(マット・シュレーダー監督、2016年)だ。

 これまでも知名御多出横の音で映画を上映できたらと思っていた宮島さんだが、なかなか依頼するチャンスがなかった。「すばらしき映画音楽たち」の上映が決まり、「このタイミングだ!」と思い立った。

 「この作品なら、映画好きの知名さんもわくわくしてくれるかな」と、メールで映画の予告編のリンクを送った。それに対して知名さんも「これいいね、おもしろそうだね」と乗ってくれたという。

シアタードーナツの劇場。リビングのような居心地の良さがある。

 その会話の様子を生き生きと話す宮島さんの横で、知名さんはほほ笑みながらうなずいている。なんかこれだけでも絵になるなぁと思いながら、2人の話を聞く私。話は宮島さんの映画への思い、知名さんの音へのこだわりへと発展した。

◆映画にこだわる理由は「熱意」

 テレビやラジオで活躍する宮島さんが、シアタードーナツを立ち上げるきっかになったのが、映画製作に関わり、製作側の熱意をじかに感じたことだ。一本の映画に込められた思いの数々。そんな沖縄県産映画の上映機会が圧倒的に少ない現状を知ると、動かずにはいられなかった。

 2015年4月にオープンして3年。県産映画に加え、作品の持つテーマを誰が喜ぶのかと想像しながら幅広くセレクトするように変化していった。

シアタードーナツの大きくて開放的な窓ガラス
カフェをイメージするカウンターまわり

 「モットーとしては、月に1回は映画を見てほしい。今はいろんな情報があって、音楽や映画、本を味わう時間が少し忘れられている感じがする。いろんなコミュニティーを刺激したい。映画はそういう力を持っている」と宮島さんは穏やかに語る。

 「今、上映している映画の製作に僕は関わっていないけど、エンドロールに自分の名前が入っているぐらいの気持ちで上映している。だから『上映してくれてありがとうね』とか言われるとうれしい。やっぱり映画が完成する瞬間は、観客に見てもらった時だから。そう考えると知名さんのスピーカーも、知ってるけど聴いたことがない人がいっぱいいて、聴いてもらうのがゴールだと思う」。

 映画と知名さんのスピーカーの素晴らしさ、作られる過程への想像などを観客にはお土産として持って帰ってほしい。これが今回の企画を通しての、宮島さんの願いだ。

 「僕は映画を見る行為がすてきだなと思っていて、それを紹介するだけ。『宮島がいうなら間違いないな』と言われたら一番うれしい。今も見終わった人に『どんなだった?』と聞いてしまう。そこからまた、出会いがあったりもするから楽しい」と純粋に映画への愛情を語る宮島さんの言葉で、映画やものを作る人への私の視点はこの日でリスペクトへと変わった。

◆どこにいても届く「音」の秘密

 知名さんの音に懸ける情熱、ものづくりへのこだわりもすごかった。

 1975年に創業した知名御多出横。小学生のころから知名さんは手作りでラジオを作り続けてきた。パイプ型スピーカーを開発したのはいまから16年前。家族経営の工房で、シンプルで美しいオーディオを作り続けている。

 宮島さんから届いた「すばらしき映画音楽たち」の予告編のリンクを見て知名さんは、「僕のスピーカーも音の表現。それなのでコラボレーションして上映するとおもしろいかもなと思ってね」と話し始める。

上向きのスピーカーの音の出口にある円錐形の反射板が、すべての方向に音を拡散する。

 シアタードーナツに着いて真っ先にのぞき見たパイプ型スピーカーは、正面ではなく上を向いていた。スピーカーの上部に見える円すい型の反射板から音が広がり、室内どこにいても同じように音が広がる仕組みだ。さらに溶接によるアンプの設計でノイズが抑えられ、透明な音を再現しているのだ。宮島さんも「知名さんの音の魅力は、どこから聴こえてきているのだろうという不思議な感じ。存在感のある、体感させる音を出すよね」と声が弾む。

 知名さんのスピーカーは、世界で初めて音の波長を取り入れた設計だ。とはいえ一つ一つ手作りで、今回のシアタードーナツに入っているタイプは規模が大きいので時間もかかるという。「前を向いたスピーカーという常識にこだわらず、枠からはみ出ないと」。そう言って笑う知名さんはギネスで世界一を取ることが目標だ。自分にしか出せない音を突き詰めてスピーカーを作り、挑戦し続ける。

仲良くポーズを取ってくれた知名さん(左)と宮島さん

 そんな知名さんに対して宮島さんは、「『生活の中でいい音があるっていいよね』っていう知名さんの思いと、僕の映画に対する思いが重なる部分がある気がした」とうなずく。その言葉で2人が浮かべた表情が、なんとも誇らしげに見えてうらやましく思った。

 飛行機の模型作りが好きな知名さん。いずれは模型の中にもスピーカーを搭載させると語るまなざしは鋭い。「遊びで模型を作ってきた中で応用が広がった。その経験から仕事の中でも無限にある組み合わせを試し、ないものを作ることがおもしろい」