◆アイデアを実践へ、琉大生が踏み出す
「沖縄の道路景観は、果たして観光地らしいのか?」
琉球大学観光産業科学部観光経済学ゼミが、昨年7月にあった「おきなわの観光」意見発表コンクール(かりゆしグループ主催)で投げかけた質問だ。

同ゼミは、道路を花で彩る景観整備によって観光客の満足度がどう変化するのかを検証する「ブルーミング・アイランド・オキナワ~花で彩る南ヌ島」を発表し、最優秀賞に輝いた。
それから約半年。ゼミ生11人はアイデアの実現を目指して、ひとつの実証実験に踏み出している。

那覇市内のあるポイントを花でいっぱいにして観光客の反応を確かめ、分析結果を行政や企業に提案、事業の継続と拡大を図る―。その実証実験に必要な資金を、クラウドファンディングで呼び掛けている。
どうして実践するのか? 同ゼミ生に聞いた。
◆道がきれいで、経済効果アップ?
まず、観光経済学ゼミが提案した「ブルーミング・アイランド・オキナワ~花で彩る南ヌ島」をおさらいしよう。
同ゼミは県内の大学生を対象に、観光地を選択する際に何を重視するのかアンケートを実施した。
「現地へのアクセス」と「絶景ポイントの多さ」が大きなウエートを占める中、「道路整備」は「宿泊施設の種類の多さ」よりも重視されていることが判明。その結果から道路整備による経済効果を独自に試算したところ、観光客数は8万4164人、観光収益は73億円の増加が見込めるとした。

道路整備の具体例として、沖縄観光の玄関口・那覇空港から那覇市旭橋交差点までの約2キロメートルの沿道を花で彩ることを提案。整備の費用や方法も試算し、それらの経費よりも経済効果が高いと結論づけている。(詳しいプレゼン資料は、こちらへ)
そして、2キロメートルの道路を花で彩ることができたら、沖縄全体の道路を花で彩るのが同ゼミの最終目標だ。
◆500個のプランターで彩ります!
観光経済学ゼミは、ほぼ毎年コンクールに参加して、沖縄観光の問題に関する提起とその解決策について発表しているが、実践の有無は学生任せだ。
同ゼミの佐久本樹さんは「このまま終わらせるのは、もったいなかった」とシンプルに答える。彼らの1学年上の先輩たちもアイデアを実践した事も後押しした。大屋達義さんは「改めて道路を眺めれば、雑草が生え放題。同じ観光地のハワイとの差に驚いた」、仲村渠裕斗さんも「誰かが始めないといけないなら、せっかくだからゼミでやろうと話し合った」と経緯を振り返る。



とはいえ、大学生だけで2キロメートルの景観整備は実現不可能。1カ所でのチャレンだ。
今回の実証実験「ブルーミング・プロジェクト~花で彩る南の島~観光で花咲く沖縄に!」では、①那覇空港に近い②観光客の目にとまる―の2点を重視し、ポイントを国道331号の安次嶺交差点に決定した。同交差点に500個のプランターとウェルカムボードを設置する。期間は4~5月の1カ月間で、SNSやレンタカー返却時のアンケートを通して、景観が与える観光客の満足度や消費行動などを分析する。
苗やプランターの購入、ボランティア団体への謝礼など経費は100万円を見込む。
◆いじわるな質問にも・・・
アイデアの実践は手探り状態で始まった。利用申請はどこに出すのか。費用はどう調達するのか。プランター設置後の管理は。観光客の目にとまる花の種類は。企業への支援依頼はどうするのか。就職活動との両立は可能か。
県緑化推進委員会でアピールし、企業巡りも始めるなど、ひとつひとつ課題を解決しつつ活動中だ。

彼らにいじわるな質問をしてみた。「それほど効果があるのに、どこも行わないのはなぜ?」
「直接的な収益、誘客につながらないと捉えているのでは」と佐久本さん。「ただ、県は観光の質の転換を掲げている。課題の滞在延長や消費金額の増加を引き出すのは、観光客受け入れの体制作り、質だと思う。景観整備はそのひとつで、沖縄観光の成長に欠かせない」と強調する。地域住民が育てた花を活用することで、県民のおもてなしの心も啓発できると話す。
大屋さんは「実証実験を成功させて、観光客と沖縄両方にメリットを出したい」、仲村渠さんは「形として残さないといけない責任感と、形になる楽しみがある。クラウドファンディングを成功させてたい」と力を込めた。