東京大学高大接続研究開発センター長 大学院教育学研究科教授 南風原朝和さん(64)=那覇市出身

 心理統計学の権威としてテスト理論をはじめとする研究に情熱を傾ける一方、文部科学省が進める高校、大学教育、大学入試の三位一体改革である「高大接続改革」の委員を務めた。「専門家として目の前の改悪は阻止する。公平で妥当性の高いテストを」と舌鋒(ぜっぽう)鋭く社会的発言を続ける。

「受験生には深い理解を伴った知識を身につけてほしい」と語る南風原朝和さん=東京大学本郷キャンパス

 少年期は琉球政府時代。戦後復興支援の一環としてつくられた、国費で沖縄の学生を本土の国公立大に進学させる制度に合格し、東京工業大へ進学した。「理系と文系にまたがる分野を」と、経営工学を希望したが、制度の枠にあった機械工学しか選択の道はなく、夏休み前に中退した。

 独学で、翌春の一般入試で東京大学理科2類に合格。教育学部で人の心理や行動原理に数量的にアプローチする心理統計学に出合う。プログラミングなど理系のマインドと数学の知識が生き、3年時には上級生の卒論データ分析のアドバイザーとなった。「結果的に理系と文系にまたがる分野に行き着いた」

 同大学院の2年目に渡米。アイオワ大学大学院で開発したテスト理論の手法は“ハエバラメソッド”として評価され、論文賞を獲得した。帰国後、新潟大を経て母校に着任。総長補佐や教育学部長を歴任後、理事・副学長として、入試全体の統括や学生支援などを担当。義兄に当たる沖縄出身の里見進東北大総長をはじめ、多方面と交流した。

 一方、学外では文科省からの依頼で高校、大学教育、大学入試の一大転換点となる「高大接続改革」の委員を務めた。会議の争点となった2020年度から導入予定の新テスト「大学入学共通テスト」について「記述式問題の導入は大規模共通試験には不向き。英検やTOEICなど、複数の英語民間試験の導入は試験間の公平な比較が保証されておらず、拙速」と警鐘を鳴らす。根底には「受験生に、学びの本質から外れた受験対策ではなく、深い理解を伴った知識を身に付けてほしい」という思いが込められている。

 委員の任期を終えた現在も、多くのマスメディアから専門家としての意見を求められる。「委員として自分なりの努力をしたが、専門家として満足できる結論を導くことができなかった。今後もより良い制度となるよう尽力したい」と意欲を見せる。

 名字からも沖縄出身だと伝えやすい。「沖縄はスポーツ、芸能と比べ、学術と産業はまだまだ力を発揮しないといけない」と郷土の誇りを忘れることはない。

(小笠原大介東京通信員)

【プロフィル】はえばら・ともかず 1953年那覇市生まれ。那覇高卒業後、72年に国費沖縄学生として東工大へ入学。同年夏に中退。翌年東大理2に合格し、教育学部で心理統計学を学ぶ。米アイオワ大大学院で博士号を取得し研究員に。帰国後、新潟大助教授を経て、93年に東大教育学部に着任。総長補佐、付属中等教育学校長、教育学部長を経て2015年から2年間、理事・副学長を務めた。現在は同大の高大接続研究開発センター長。