著者の上原正三さんは「ウルトラマン」の脚本家だ。読み始めてすぐに「さすがウルトラマン」とつぶやきながら一気に読んだ。

キジムナーkids(現代書館・1836円)

 時は終戦直後。主人公はハナーと呼ばれる感受性が強くて少しシカボーな小学4年生。疎開帰りで靴を履いている彼はすぐに村の腕白たちに目をつけられるが、数々の試練を乗り越え、やがて彼らの仲間に加わるようになる。

 威勢のいい腕白(わんぱく)たちは、集団自決の生き残りだったり空襲で片腕を吹き飛ばされていたりと、それぞれに過酷な運命を生きていた。

 だがそんな悲劇も日々の空腹も、多感なハナーが語るとどこか幻想的だし、キジムナーやユタ、御嶽(うたき)という村に息づく霊的な存在もつらい現実をやさしく揺らす。

 周囲の大人たちも魅力的だ。戦争中は従順な被害者だったウチナーンチュが、戦後は生きるために「モノの有るところ」(米軍基地内)からありとあらゆるモノを盗み出す場面は痛快ですらある。

 そうか。あれは戦争で翻弄(ほんろう)されたウチナーンチュが、アメリカに挑む復讐(ふくしゅう)戦でもあったのか。

 しかし、そうして大人も子どももたくましく生活の再建を目指す中、危険なハブ谷を彷徨(さまよ)う幽霊のような「フリムン軍曹」の存在が、戦争が壊してしまった取り返しのつかないものを私たちに静かに示してくれる。

 私は「瓦礫(がれき)の山のファンタジー」として読んだが、そうではないような気もしてくる。

 焦土の中、生き残った者たちは所有者のわからない土地に掘っ立て小屋を建てて住み、戦果を求めて米軍基地に忍び込み、米兵は隙を見て女を犯す。子どもも黙って飢えているわけにはいかない。そんなアナーキーな時代が、戦争を知らない者の目にファンタジーに見えただけかもしれない。

 「あの少年たちはあれからどうなったのだろう」とふと考える。そして「沖縄はどう変わったのだろう」とも。もしかしたら、あの時代の記憶を共有することが、今の沖縄を考える起点になるのかもしれない。(伊波雅子・自営業)

 【プロフィール】うえはら・しょうぞう 1937年那覇市生まれ。中大卒。66年「ウルトラQ」でデビュー。69年フリー。「帰ってきたウルトラマン」「秘密戦隊ゴレンジャー」「宇宙刑事ギャバン」など多くの作品でメインライターを務める。2018年に坪田譲治文学賞受賞