◆私らしく、はたらく(4)吉戸三貴

 広報課を希望していたのに企画課に配属された。そんな時、あなたはどうしますか。次の三つの中から一番近いものを選んでください。

 (1)仕方ないと諦める(2)上司に抗議する(3)受け入れつつ異動する方法を考える。

 どれが正解とは言い切れませんが、私なら迷わず(3)を選びます。諦めたり抗議したりするよりも、希望が通る可能性が高いと思うからです。

 辞令を受け取ったら、すぐに「わたし広報異動プロジェクト」(極秘)を立ち上げましょう。人事への不満は一切言わず、冷静に、広報課への異動を実現するための条件と期間を見極めるのです。もし、条件が「広報課長と企画課長の承認」、期間が「1年」だとしたら、両課長に1年以内にあなたの異動を認めてもらう必要があります。

 さあ、頭の中でスパイ映画っぽい音楽をかけたら、ミッション開始! まずは企画の仕事に集中し、できるだけ短期間で評価を獲得しましょう。企画課長の関心事(成績アップなど)に貢献し、「頑張ってくれているし、希望をかなえてあげたい」という気持ちを引き出します。その上で、少しずつ、広報の仕事に関心を持っていることを伝えるのです。

 次に、広報課長のニーズを探ります。例えば、海外からの取材依頼が増えて英語対応で困っている様子なら、雑談などでさりげなく対応できることを伝えておき、声がかかったら全力でアピールするのです。コツコツと役に立てることを増やして「広報に必要な人材だ」と思ってもらえたら大チャンス。異動できる確率も高まるでしょう。

 大事なのは、キーパーソン(ここでは課長2人)のメリットを考え、行動することです。そう言うと「なんとなく、ずるい感じがする…」という反応が返ってきそうですが、物事を相手の視点で見たり、自分から貢献する努力をしたりするのは、ある種の思いやりですし、ビジネス・コミュニケーションではとても大切なことです。今回は異動を例にあげましたが、仕事上のさまざまな場面で役立つ考え方だと思います。

 スパイだって、目的を達成するためにはいろいろな手段を使います(想像ですが)。正面からぶつかって玉砕してばかり…と感じているなら、ペン型カメラを試すくらいの気持ちで、まずは挑戦してみませんか。(コミュニケーションスタイリスト)