おとといの晩、仕事を終えて家路に就くと、赤く照らされた月が空に浮かんでいた。暗がりの公園や駅前広場に防寒着の老若男女がたたずみ、スマートフォン片手に欠けゆく満月をめでる
▼今回の月食は35年ぶりの「スーパー・ブルー・ブラッドムーン」。長ったらしい呼び名は米航空宇宙局(NASA)が名付け親らしい。月が地球に接近して、いつもより大きく見える「スーパームーン」は知っていたが、1カ月で2回目の満月を「ブルームーン」というようだ
▼由来は諸説あるが、「めったにない」という意味の英語の慣用句「once in a blue moon」から来ているという説も。そういえば三谷幸喜監督の映画「ステキな金縛り」の英題にも使われていた
▼「ブラッドムーン」は、皆既中に血のような色になるのが理由。太陽光が地球の大気を通る際、波長の長い赤い色だけが通り抜けて屈折し、地球の影に隠れた月に届くため、というのがメカニズムだ
▼ニューズウィーク日本版(電子版)によると、三つの現象が重なるのは満月2380回に1回で、計算上265年に1度。天文ファンでなくともロマンがかき立てられる▼夜空の天体ショーを眺めていると、携帯電話の社内情報共有メールに「オスプレイ、久茂地通過」の知らせ。甘美な気分が興ざめした。(西江昭吾)