日清戦争後、沖縄近隣に位置する台湾は日本に割譲され、日本帝国の一部である沖縄人民に編入されるにいたった。日本国内では「二等国民」との差別を受けると同時に、新領土台湾開拓の先鋒(せんぽう)とされた。台湾植民統治初期より沖縄の人々は次々と台湾へ渡った。

大日本帝国植民地下の琉球沖縄と台湾(同時代社・4104円)

 彼らの中には抗日武装を鎮圧する警察や台湾植民地教育を推進する教員もいれば、軍営や道路、港、病院等のインフラ建設労働者や娼妓(しょうぎ)等にいたる当時の社会の大部分の階層が含まれる。これら移民は日本植民帝国の重要な建設者であり参加者であるが、日本帝国敗北と共に歴史の片隅に埋もれていった。歴史を専門とする学者にしても、研究の重点は主に沖縄をめぐる政治問題であり、沖縄の文化や歴史に関する研究は比較的少なく、学界では沖縄人の視点から歴史を論じる著作が急務とされていた。

 又吉盛清氏の新著『大日本帝国植民地下の琉球沖縄と台湾』はまさに「人」の視点から台湾における沖縄人の集合的記憶を明らかにした秀作である。本書は著者が台湾を60回訪れて自ら得た認識を土台に、沖縄人の台湾植民地での体験を骨子として、その集合的記憶を新たに明らかにした。エリート統治者としての沖縄人と労働者としての沖縄人の二つの異なる視点で、それぞれの台湾経験と、「近代化」「日本化」の過程にいかに関与し受容したかを示している。

 印象的なのは、沖縄出身の著者が自身の「被害者」の立場を探るとともに、「加害者」の役割も果たしたのではと反省していることである。本書はこのような自省の態度によって、歴史の真相を明らかにするとともに、反省と批判の色彩を帯びている。著者は学者としてだけでなく、1人の沖縄人として、自己の民族歴史に対する自省と反省を出発点に、日本植民帝国において沖縄人が被害者でもあり、また統治者の役柄を放棄し得なかったことへの当惑と矛盾を分析している。このような追究と自省のなかに歴史の真実をうかがい知ることができる。(黄英哲・愛知大学国際問題研究所長)

 【著者プロフィール】またよし・せいきよ 1941年浦添市生まれ。沖縄大学客員教授。著書に「日本植民地下の台湾と沖縄」など多数