沖縄県内の児童養護施設や里親家庭で育つ児童らに対する虐待事案が2009~16年度の8年間で計27件あり、延べ73人が被害に遭っていたことが2日までに分かった。沖縄タイムスが県に情報公開請求し入手した資料で明らかになった。保護者がいない児童や虐待された児童らを守り育てるはずの「砦(とりで)」で被害が発覚し、専門家は「子どもたちは誰を信頼していいか分からなくなる。氷山の一角ではないか」と懸念した。(社会部・石川亮太、篠原知恵)
虐待の内容で最も多かったのは身体的虐待で15件26人。次いで性的虐待の5件5人、ネグレクト(育児放棄)が4件37人、心理的虐待が3件5人だった。
09~15年度は毎年度2~4件、16年度は最多の6件発生した。場所別では児童養護施設などで24件、里親家庭で3件だった。主に3~18歳が入所している児童養護施設などでの加害者は、児童指導員や児童自立支援専門員、保育士などの指導職員が多くを占めた。
資料では実務経験16年の指導職員が施設内で児童に身体的虐待を加え、けがを負わせた。指導職員が午前3時に宿直室で児童に性的虐待を加えたケースもあった。入所児童の間での性加害・被害が多発していたにもかかわらず、施設長をはじめ職員十数人が適切な対応をせず、ネグレクトと判断された事案もあった。
児童相談所の一時保護所や障がい児入所施設などでの被害もあった。施設などは虐待や疑いの事案が発生した場合、県に届け出る規定があり、県の第三者委員会で虐待かを判断する。
県青少年・子ども家庭課の担当者は「職員の資質向上の研修などの取り組みを強化し、再発防止に努めたい」と話した。
資料は児童福祉法改正で09年から始まった調査を県がまとめたもの。被害児童と加害側の年齢や性別、虐待の具体的な様態などは黒塗りされ、明らかにしていない。