社説

社説[裁量労働制削除]「高プロ」も同じ問題だ

2018年3月3日 09:44

 今国会に提出予定の働き方改革関連法案から、裁量労働制の適用拡大を削除すると、安倍晋三首相が参院予算委員会で正式表明した。

 安倍首相が1月の衆院予算委で「裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方に比べれば一般労働者より短い」と答弁したことに端を発した問題である。

 答弁の基になった厚生労働省の調査は、裁量制労働者と一般労働者で手法の異なる不適切なものだった。

 安倍首相は答弁を撤回し陳謝する事態に追い込まれ、その後も厚労省調査に数百件もの「異常値」が発見された。

 こんなずさんな調査を法律の必要性の根拠とすることはできない。関連法案から削除するのは当然である。

 裁量労働制は、実際の労働時間に関係なく、あらかじめ労使で決められた時間を働いたとみなし、その分だけの賃金を支払う制度だ。

 厚労省は裁量労働制で働く人の労働時間の実態を再調査し、労働政策審議会で改めて協議してもらう考えだ。これまた当然である。

 新たな調査と同時に、今回の不適切な調査がなぜ起きたのか、その検証も不可欠だ。

 関連法案の4本柱は(1)残業時間の上限規制(2)同一労働同一賃金の導入(3)高度プロフェッショナル制度(高プロ)の創設(4)裁量労働制の適用拡大-である。

 裁量労働制を削除したからといって問題が解決したわけではない。高プロも長時間労働につながりかねない同じ問題を内包しているからだ。

■    ■

 労働基準法は「労働時間の上限を1日8時間」「残業には割増賃金を支払う」と定めている。高プロは一部専門職をその労働時間規制から完全に外すものである。

 法案には対象職種は具体的に示されていないが、厚労省は金融商品の開発業務やコンサルタントなどの専門職で、年収1075万円以上の人を想定している。政府は「時間ではなく成果で賃金が支払われる」などと柔軟な働き方のメリットを強調する。

 ほんとうにそうなのか。裁量労働制は深夜、休日の割増賃金が支払われるが、高プロにはそれもない。労働組合や過労死遺族らは「残業代ゼロで過剰な仕事量を押し付けられ、過労死が増える」と危惧する。野党は「スーパー裁量労働制」と批判している。導入されれば、対象職種は省令で決めることができ、広がっていく懸念が拭えない。労働者の視点に立つならばこちらも法案から削除すべきだ。

■    ■

 働き方改革関連法案は8本の法律の改正案を抱き合わせたいわゆる「束ね法案」である。労働側が求める残業規制の強化と、経済界が長年要望している労働時間規制の緩和という方向性の違う政策を1本の法案として提出しようとするものである。

 2015年の安全保障関連法案も10本の法律の改正案を抱き合わせた「束ね法案」による乱暴なやり方だった。

 政府が17年にまとめた「働き方改革実行計画」には「働く人の視点に立って、労働制度の抜本改革を行う」とある。原点に立ち返るべきだ。

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