なぜ、何の落ち度もない被害者側がこんなにも苦しまねばならないのか。うるま市でおととし、ウオーキング中の女性が米軍属に殺害された事件で、米政府が遺族に日米地位協定に基づく補償金を支払わない意向を示している
▼米軍の直接雇用ではないので、制度が適用される「被用者」には当たらないという主張だ。地位協定は被用者の範囲を示していない。軍属の特権を享受しながら補償の対象外という米側の論理は理解し難い
▼基地の機能は軍人だけでは成り立たない。装備品の整備から法務や会計、PX(売店)…。被告は海兵隊員として勤務した経験もあり、民間業者に雇われ基地内外で自由に行動していた
▼米軍基地の集中は米軍人や軍属の集中も意味する。県民が米軍関係者の犯罪に巻き込まれる危険性は、他県と比べ桁違いに高い
▼20日の衆院安保委で政府は、補償金の請求対象は「間接雇用の被用者も含まれている」と答弁した。米側との解釈の違いをどう埋めるのだろうか。補償金が認められたとしても米側の裁量で額は決まるが、これまでの例では支払い分は極めて低額だ
▼基地の縮小と地位協定見直しが急務だ。20歳を迎え幸せいっぱいだった人生の歩みが突然断ち切られた。最愛の一人娘を奪われた遺族が、これ以上理不尽な仕打ちを受けることは決して許されない。(知念清張)