きょうは旧暦12月8日のムーチー(鬼餅)。暖かい日と寒い日が繰り返される「三寒四温」とも言えるが、北風が強く吹く日は、この時季の寒さを表すムーチービーサを感じる
▼家庭で手作りのムーチーを作ろうと、サンニン(月桃)の葉をたくさん買い求めた人も多いだろう。スーパーでは、もち粉と砂糖などが並ぶ特設コーナーも。保育園や地域でも行事や活動にムーチー作りがあり、脈々と伝統が息づいている
▼子どもの頃、寒い朝から震えながら冷たい水でサンニンやクバ(ビロウ)の葉を洗ったという人も珍しくない。9人きょうだいの知人は、真冬の思い出の一コマとして記憶に刻まれているという
▼エッセイストの古波蔵保好によると戦前、子どもたちは何の味付けもしていない真っ白い餅を好んで食べた。「包んだ葉の芳香が、砂糖や塩や醤油(しょうゆ)にまさる沖縄的味付けになっていた」(「料理沖縄物語」)と書く
▼家族のだれかが亡くなった場合は、1年間は喪に服したため、ムーチーは作らなかった。壁にムーチーがかかっていることは、家族が健康で元気であることの証しだったという
▼カボチャ、抹茶、紅芋など、最近のムーチーは味付けも進化。簡単に作れる便利な商品も登場している。だが、子どもの成長や家族の健康を願う気持ちは、今も昔も変わらない。(玉寄興也)