小中学生の頃、始業式の日に新品の教科書が手渡された。紙やインクの独特なにおいに、わくわくと緊張感が入り交じった気持ちになったことを覚えている

 ▼その教科書でルール違反が相次いだ。教科書会社12社が検定中の教科書を全都道府県の教員ら延べ5147人に見せ、うち4千人近くには謝礼に現金を支払っていた

 ▼検定中は外部に見せることを禁じた文科省の規則に違反するというのに、これだけ多くの教員がかかわっていたとは驚く。沖縄でも63人が見ており、48人が現金を受け取っていた。九州では、福岡、鹿児島に次いで多い

 ▼県内は高校歴史教科書の検定で「集団自決(強制集団死)」から日本軍強制の記述を削除したことに抗議する県民大会が8年前に開催され、八重山地域では教科書採択で意見が分かれるなど敏感な環境にあり、教員の意識は高いと思っていたのだが

 ▼業者から意見を求められただけかもしれないが、金が介在することに何の抵抗もなかったのか。違反にかかわっていた教員は、子どもに倫理観を説くことができるのか

 ▼毎日使う教科書だ。競争激化で教科書会社が今回のような不正に走らないよう、公平公正な新たなルール作りを進めてほしい。同時に金を受け取っていた教員が、教科書採択にかかわったのかも含め徹底的に調査し公表すべきだ。(玉寄興也)