沖縄ハーブの香りが溢(あふ)れ出てくるような華やかな装丁に目を惹(ひ)かれページを開く。

沖縄八重山発 南の島のハーブ(南山舎・2484円)

 与那国島出身、石垣島在住の著者、嵩西洋子が島に暮らす人間の立ち位置で、島のハーブひとつひとつに飾らない言葉できめ細かい説明を入れている。

 その数はなんと337種類というから驚きだ。ここまでの数を1冊にまとめた本は他に見当たらない。それを科ごとにまとめ、学名と別名を記載しているので専門書としても活用ができる。

 島特有のハーブのみならず、本州でもお馴染(なじ)みのハーブも多く取り上げられているが、亜熱帯海洋性気候の特徴を持つ八重山では、本州のそれとは育ちかたなどに大きな違いがあることが読み進めていくと見えてくる。また、石垣方言、与那国方言、沖縄の一般的な方言も記載されており、昔から暮らしの中にハーブがあたりまえにあったことが伺われる。

 ハーブレシピもふんだんに掲載されているので、自分ですぐに試すことができるのは読者にとってうれしいこと。昔ながらの活用法も紹介しながら、著者オリジナルの常識にとらわれないレシピの数々は圧巻で、彩り豊かだ。

 薬草をあたりまえに使いこなしていた祖母の影響で、幼いころからハーブに親しんできた嵩西が本格的にハーブの活動を始めたのは2000年にNPO法人ジャパンハーブソサエティーに入会してから。

 ふと足元を見ると、そこにピパーチがあったという。ピパーチは日本で唯一食用、薬用として使われてきたコショウ科のハーブで、八重山では生活圏内に生息し身近なものだった。しかし、宅地化や道路整備の影響で栽培場所の琉球石灰岩の石垣が取り壊され、その姿が減っていることに気づいた。

 そこで嵩西は07年、挿し木による増殖栽培を確立し、地域に普及させる活動を開始した。それから10年余り、足元を見続ける彼女の姿勢に揺るぎはない。

「大切な島のハーブを伝えたい」

 本書はその活動の集大成だ。(神崎優・フリーライター)

 【著者プロフィール】たけにし・ようこ 1954年与那国島祖納生まれ。農業生産法人株式会社石垣島胡椒園代表取締役。著書に「紀和へ。母の花だより」など。